国破れて山河あり――いえいえ、国破れても勝てる方法もございます:「国盗り頭脳バトル 信長の野望」レビュー(2/3 ページ)
ひとかどの武将になったつもりで、いざ尋常に勝負
ルールは分かった。NPC相手ではそこそこやれるようになったと勝手に思いこみ、次なる野望として対人戦に挑むことに。時は6月某日。コーエー本社において、プレス対抗戦の案内が届く。戦乱モードのワイヤレス通信対戦を利用し、10媒体がしのぎを削ろうというのだ。これは願ってもない好機ではないか。当然、一旗あげようと筆者も、ニンテンドーDSを持参して駆けつけることにした。
さて、本作は対戦してなんぼのタイトル。開発を、オンラインゲームの開発部門であるソフトウェア3部が担当しているのがその証拠ともいえる。対抗戦は、そのソフトウェア3部も入居するコーエージェミニビル屋上にある社員用休憩室で行われた。流れとしては、15分の練習の後、予選、そして決勝と進む。もちろん、参加者は皆、この決勝を狙っている。
対人戦でもっとも気をつけたいのは「時間」だ。1人プレイでは、あれやこれやと武将選択も行動選択もたっぷり時間を取ることができたが、対戦となると1分という制限時間がプレイヤーを悩ませる(武将選択は3分の制限時間がある)。限られた時間の中で、プレイヤーは最善の策を見いだし、他者がどういう行動を取るのかを予測しなくてはならない。制限時間内で行動を終了することもできるが、一度決定を押してしまうと取り返しがつかなくなるので、ギリギリまで時間を使い切るというのが定石となるが、筆者はせっかちである。ガンガン終了を押し、後にため息をつくことになる……。
予選で筆者はBテーブルに振り分けられた。3人がプレスで、残り大名はNPCが担当することになる。とりあえず30ターンの間に50万石に達した者が決勝進出というルールだ。なお、勝負がつかなかった場合は、30ターン終了時にもっとも石高を獲得していたプレイヤーの勝利となる。今回の対抗戦では公正を期すため、すべての獲得武将がオープンになっている状態でのスタートとなった。ちなみに、予選の前に行われた練習試合では、このメンバーで武田を選択した筆者は冒頭、城をすべて占領され「従属」という憂き目にあっている。例え従属されても、のちに城を確保し、石高で超えると再び独立するので、じっと従属に耐え、力を蓄えるのも手だ。
さて、大名選択の順番はランダムで指定されるのだが、これも勝負の分かれ道といえる。場合にもよるが、後ろに敵がいないほうが勝負に打って出やすい。予選のルールでは「近畿」通常マップを使用することになっているので、上杉や武田、毛利が角を押さえた状態のため有利といえる。当然だが、順番が先に来たプレイヤーは上杉、武田と選択していく。筆者はある考えのもと、織田をセレクトした。そう、シナリオモードでなじみがあったから、ただそれだけの理由で、だ。
中央に領地を持つ織田信長であっても、戦い方によっては有利になる。本拠地となる清洲城を拠点に、徳川家康さえ押さえ込めば、京の都を含めた広大な平野部に手を伸ばしやすいのだ。狙うは上杉と武田がぶつかるのを横目に、南に抜け、海岸沿いに勢力の拡大である。軍団編成で選択した武将も、切札重視で、足軽、騎馬、鉄砲をほどなく配したバランス型を心がけ、豊臣秀吉の足軽隊と蒲生氏郷の鉄砲隊、そして信長の騎馬隊を中心に、知行コストの低く切札を持っている武将を集めた。ちなみに選択武将の切札は、信長の「天魔の炎」をはじめ、「刀狩」、「猛き魂」、「豊穣の海」、「落城の時」、「築城の匠」、「ど根性」と、詰め込むだけ詰め込んだ。そして戦いの火蓋が切って落とされるのだった。
筆者の織田はまず、徳川の切り崩しに出る。何かと邪魔な南の突破口を開いておきたいからだ。ゲーム序盤は案の定、武田と上杉がつぶし合いを始めるも、やはり誰しもがとりあえず周囲のNPCをなんとかしたいという雰囲気になっている。上杉なら朝倉や浅井、武田なら斉藤がまずその標的となる。
まずクラスアップをはかるため、「猛き魂」を早々に使用し、徳川と戦うもNPCは始末が悪い。互いに消耗戦となり、決め手にかけていた。そうしている間にも本願寺や浅井が勢力を拡大し南下してくるのがうざったくなってきた。5ターンが終了し、評定ターンで自軍の兵数の少ない武将を中心に増員をはかり、同盟を持ちかけてみた。これは、利害が一致する場合、特に対人戦の場合、乗ってくる算段が高い。筆者は上杉と対する武田と手を組むことにし、安心して徳川征伐に集中した。同盟は、互いに攻撃できないだけでなく、領地を自由に通行でき、互いの城で入城・出撃が可能となる。次の評定までは仲よしこよしというわけだ。
動いたのは中盤。なんとか徳川を滅亡に追いやった織田だったが、4位に甘んじていた。上杉は日本海側を西進し、南は武田としのぎを削り、武田は太平洋へ到達し、金山を押さえて石高を伸ばしていた。徳川にかまけていた筆者はそこで切札「落城の時」を使用する。これは、武将がいない空き城を勝手に1つ占拠するというもの。ちょうど全滅した3部隊が次のターンで復活するのを見越し、切札を発動し、本願寺領の空城をひとつぶんどることに成功した。運よく周囲には敵も配置されておらず、無事次のターンに武将をその城へ出陣させ、周囲を制圧していく。ここでは特技の「開錠」も役に立った。評定の度に城の防御度を上げ(石高に上積みされる)ることも忘れず、みるみる石高が上がっていった。
しかし、盛者必衰というべきか、うっかり清洲城方面の部隊を動かすことなく時間制限内に行動終了をしてしまう。何たるイージーミスだ。思わずため息が出る。近江や美濃で隣接してしまった上杉と武田が、これ幸いと思ったのか、怒とうの攻勢をしかけてくる。すでに武田との同盟も破棄されている。その時、織田家は43万石まで伸ばしていたが、勝ちそうな人間が全員の敵となるという定石どおり、一気に領地が切り崩されていった……。
一時は勝利目前までいっておきながら30ターンの時間切れとなり、気がつけばまた4位に落ちるという体たらく。なるほど、本作が“頭脳バトル”と題している理由が、嫌と言うほど思い知らされたのだった。出直してきま〜す!
決勝では各テーブルの勝者と、2位で石高をもっとも獲得したプレスを交えた4人で争われることになった。ルールは関東通常。30ターン、勝利条件は50万石の獲得である。4人は北条、上杉、伊達、武田を選択。序盤は領地が隣接している伊達と上杉、北条と武田がそれぞれぶつかりあう。その中でも序盤のうちに佐渡と甲斐の金山を押さえた伊達があっという間に40万石を達成し、他を引き離した。
これには他家も争っている場合ではないと、直接口頭による同盟を締結し、伊達領地を切り取っていくことに。このように誰かが石高を伸ばせばそれを叩くという、予選でも見られた攻防が数ターン繰り返される中、一時は20石まで落ちこんだ石高を復活させ、温存していた切札「ど根性」(=使用ターンは戦力が倍になるが、ターン終了後に戦力が1になる)を使用し、一気に勝負に出てNPCの長野家の城を落とし、見事伊達をプレイしていたメディアワークスが優勝した。
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