1本が10本分にもなる――サイバーステップが考える海外展開の重要性CEDEC 2008

オンラインゲームを自社開発するサイバーステップを代表して、代表取締役社長の佐藤類氏が講演を実施。自社開発を行う意味や、海外展開のメリットなどが語られた。

» 2008年09月11日 23時52分 公開
[遠藤学,ITmedia]
photo 佐藤類氏

 ゲーム開発者向けカンファレンス「CESAデベロッパーズカンファレンス 2008」の最終日には、サイバーステップ 代表取締役社長の佐藤類氏による講演「新開発オンラインゲーム(2タイトル)の国内サービス立ち上げ及び海外展開(韓国、中国、台湾、米国)についての具体的活動の紹介と研究開発中の新しいオンラインエンターテイメント(遠隔操作ロボット)のデモ」が行われた。

 サイバーステップの特徴としては、オンライン3D対戦格闘「ゲットアンプド」や、オンラインロボアクションRPG「ロボ聖紀C21」といったタイトルを自社で開発し、10を超える海外の国および地域で、現地の会社と協力してサービスを提供していることが挙げられる。講演でまず、この点に触れた佐藤氏は、自社でタイトル開発を行っている理由を次のように話す。

 「役員会とかで新規タイトルの話をすると“それは売れるの?”という話になってしまう。僕は売れるかどうかではなく、作りたいか作りたくないかが大事だと考えている。作ってからできあがったものを見てもらって、買ってくれるところと一緒に組んでやればいい」。

 海外でタイトルを展開するようになったのは、2002年のゲットアンプドからだったと佐藤氏は振り返る。ゲットアンプドは当初、3680円のシェアウェア、380円の月額課金という2つの方法で販売していたが、ユーザーのほとんどが月額課金を選択したため、月の売上は5万円程度、大赤字でのスタートになったのだという。

 何から手をつければいいのか分からなかった時に、たまたま韓国のゲームメーカーと知り合う機会を得たと佐藤氏。「ゲットアンプドを見てもらったところ、韓国で一緒にやろうという話になりました。その後、ゲットアンプドを開発し直して、2002年12月に韓国で正式サービスが始まり、現在では12の国と地域で展開するに至っています。まぐれ当たりといえば、完全にまぐれ当たりですね(笑)」。

 アイテム課金に変更したのは韓国側からの要望で、当時は仕組みを理解していなかったと佐藤氏。ただし、仕組みを理解した今では、さまざまなメリットを感じていると話す。「家庭用ゲームのパッケージ販売とは異なり、地域にあった価格設定を行える柔軟性がありますよね。例えば中国なら日本の4分の1くらいの価格といったように、そこにいる人たちの所得を考えた値付けができる。それとゲーム内での売れ筋、楽しまれ方を見て、新規アイテムの売り出し、追加開発が行えるんです」。

 話題は“海外展開がなぜ必要か?”に移る。佐藤氏曰く、「単純な話で、国内人口の約1億3000万人に対して、世界人口は60〜70億人だからです。日本でどれだけ頑張っても1億4000万人になることはないですけど、海外であれば上限は60〜70億人になる。全員というのは無理でしょうけど、10億人ぐらいなら現実にあってもおかしくはない。ゲームを楽しみたいという人は世界中にいて、少なくとも日本の人口よりは多いはずなんです。日本のエンターテインメントはレベルが高い。日本にいると実感がわかないかもしれませんが、それはトップクラス同士で競っているからよく分からないだけで、世界的に見ればダントツなんですよ」とのこと。

 続けて、「サイバーステップは創業して9年が経ちますけど、今年の年末に新規タイトルを2本出して、ようやく自社開発タイトルが4本になります。2年に1本出している計算になりますけど、ロボ聖紀C21が黒字化したのは昨年末ぐらいからで、僕らはこの8年間、ゲットアンプドだけで生きてきたんです。作ったのは1本でも、それを海外展開することで1本が10本分にもなる。東南アジアの国でも、ある程度規模のある会社なら20、30万ドルは払ってくれます。3カ国で展開すれば100万ドルにもなるんです」とも語ってくれた。

photophotophoto 講演の途中では、現在開発中の「コズミックブレイク」「ゲットアンプド2」の紹介も行われた。ゲットアンプド2はクローズドβテスト中ということで、佐藤氏によるによるデモも実施

photophotophoto 講演タイトルにもある通り、ロボット研究の成果も披露。サイバーステップ社内にいるというロボットを、佐藤氏が遠隔操作した


 最後に佐藤氏は「好き勝手にゲームを作るのは難しい」と前置きしたうえで、「作ったら評価してくれる人、お金を出してくれる人というのは国内に限定されません。売れれば何とかなるくらいの気持ちでゲームを作ると、本当によいものができるのではないでしょうか。日本のクリエイターはせっかく才能やセンスがあるのですから、日本や北米、欧州以外にもエンターテイメントを届けてほしいと思います。一番は会社を作ってしまうことです。(サイバーステップの)競合になって、僕が“何であんなこと話したんだろう”と後悔するぐらいのゲームが出てくることを願っています」と話すなど、日本や北米、欧州だけでない、本当の世界に目を向けることの大切さを説いた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/16/news016.jpg 結婚式で乾杯音頭をとる3歳息子、口癖になるほど練習して…… 大好きなおじのために頑張る姿が580万再生「天才!」「可愛い過ぎて涙出ました」
  2. /nl/articles/2404/15/news025.jpg 悪さばかりする猫に小型カメラを装着→映像を確認してみたら…… 衝撃の光景に「ヤバい最高」「こういうの見たかった」
  3. /nl/articles/2404/16/news014.jpg 築54年団地の狭いキッチン、洗った食器はどこに置く? プチプラ&すっきり片付くアイデアに「私の理想!」「そのセンスが欲しい」
  4. /nl/articles/2404/16/news015.jpg 8歳娘が描いた“志村けん”に「うますぎてびっっっっくり」「間違いなく天才」と絶賛の嵐 才能あふれるペンさばきが128万再生
  5. /nl/articles/2404/16/news006.jpg 元野良猫たちの家の庭に野良猫が現れた→ガラスを隔てた熱い攻防戦が…… それぞれの反応と予想外のオチに爆笑
  6. /nl/articles/2404/15/news081.jpg 【今日の計算】「13+8×2−11」を計算せよ
  7. /nl/articles/2404/15/news156.jpg 豊田章男会長、マクドナルド「ハッピーセット」のおもちゃに大喜び→「天下のトヨタ会長がハッピーセットって」「ほんとお茶目で好き」と話題
  8. /nl/articles/2404/16/news033.jpg 小麦粉を変えてクッキーを作ってみたら…… 5種類の焼き比べが100万表示「こんなに変わるのねぇ〜〜〜」「みんな違ってみんな良い!」
  9. /nl/articles/2404/15/news132.jpg 「仮面ライダーゼロワン」出演俳優、脳梗塞の後遺症続き活動休止 「右半身の麻痺が回復せずこの度の決断に」
  10. /nl/articles/2404/03/news161.jpg 橋爪淳、大河ドラマ出演終了で「大腸に5センチ程のガン」公表 “病院嫌い”だったと明かし「命を繋いで頂きました」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」