脳と心にしみいる塗り絵の世界を、“大人”のあなたへ:「こころを休める大人の塗り絵DS」:レビュー(2/3 ページ)
芸が細かいのは、消しゴムを使った際に画面上に消しカスが残る、という点。羽ぼうきのアイコンをタッチして画面上に息を吹きかけると、マイク機能で消しカスが飛んでいくのだ。色鉛筆と消しゴムでの作業をリアルに味わえるニクい演出だといえるだろう。
本作のタイトルに“こころを休める”というフレーズがあるように、どうやら塗り絵には脳の活性化以外に癒しの効果もあるようだ。穏やかなインストゥルメントの音楽を聴きながら、何の目的もなくただゆったりと色を塗る作業をしていると、確かに心がほぐれる、というか、世知辛い周囲から一瞬隔離されるような感覚を覚えたのである。
元々マンガが好きでよく自分でも描いていた筆者であるが、線画を描く行為と着色をする行為は似ているようでけっこう違う、というのを気付かされた。着色の場合、描画能力に加えて配色のセンスも問われるし、ちょっとした力の加減で絵の印象も淡くなったり濃くなったりするのだ。そんなアナログな感覚をデジタルで的確に表現できている、という点に大いに感心させられた。
塗り絵を途中でやめて、次回に同じところから再開したい場合はメニューから中断を選ぶといい。次回に作業再開を選ぶことで続きをプレイすることができる。もし自分が納得のいくところまで塗れたら、メニューから完成を選ぼう。リスの塗り太くんがプレーヤーが塗った作品について評価をしてくれる。最高☆5つでの評価と「センスのある中学生」、「美術専門学生」、「漫画サークル部員」などの称号を得ることができるのだ。
もちろん評価が良ければうれしいものだが、これはあくまでもオマケだと考えていいと思う。かくいう筆者もそんなに評価が高くなかったから、というのもあるが…大事なのは好きなように思うさま塗り絵を楽しむという過程なのだ。
また、最初にゲームをプレイする際には、セーブデータ用のサインを作成することになる。このサインは、そのまま「作成した塗り絵が完成した際の署名」にもなるので、画家のサインっぽく筆記体のアルファベットでかっこいいサインを作るのもいいかもしれない。
その後、水彩絵具や油彩絵具も試してみたが、それぞれちゃんと絵具を使っているような感覚で塗れるので驚いた。色鉛筆とは全く質感や趣きが違ってくるのである。特にこの2つの絵具の場合は、パレットという概念が存在する。色鉛筆ではできなかった、絵具の掛け合わせによる新色作成が可能なのだ。この機能のおかげで、かなりオリジナルに近い色を出せたりする。個人的には幼い頃から慣れ親しんでいる水彩絵具での作業が、懐かしさも喚起され楽しく取り組むことができた。
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