持ち運び便利になった「テイルズ オブ」シリーズ最新作は“愛”を材料とすべし:「テイルズ オブ ザ テンペスト」レビュー(1/2 ページ)
ナムコレーベルの「テイルズ オブ」シリーズ最新作となる「テイルズ オブ ザ テンペスト」がニンテンドーDSで発売となった。ニンテンドーDS初の「テイルズ オブ」シリーズということで、その完成度が気になるところ。鍛脳系が隆盛の昨今、RPGにも頑張って欲しいその出来は?
スーファミ版以来となる、ROMカートリッジで登場した“テイルズ オブ”シリーズ最新作
“テイルズ オブ”シリーズといえば、スーパーファミコン(以後、スーファミ)末期とも言える1995年に発売された「テイルズ オブ ファンタジア」の印象が強い、という人も多いだろう。ソフトの供給媒体がCD-ROMだったからこそできたと思われていたゲームのオープニングに歌をつけるという行為を、スーファミのROMカートリッジでやってしまったのだから、当時は驚かされたものだ。また、キャラクターデザインが藤島康介氏だったり、RPGとしては珍しい格闘ゲームのような戦闘方式を採用するなどしていたのも、人気を得た一因といえるだろう。
そんな1作目から数えること11年。当初は4月に発売される予定だった本作だが、それから半年を経て、ついに携帯ゲーム機初の外伝的作品ではない、“テイルズ オブ”シリーズ本編として最新作がデビューした。ニンテンドーDSでの登場するソフトというと、どうしてもタッチパネルを使った奇抜な内容になりがちだが、本作に関してはそんなことはなく、普通にプレイできるのが何よりもうれしい(いや、奇抜でも全然いいのだが)。
プラットフォームが違えどもシリーズものなので、変わった操作方法が入ってくるよりも、従来路線を踏襲してもらうのが一番安心して遊べる。とはいえ、タッチパネルを使った“らしい”操作方法も取り入れて、快適にプレイできるようになっている場面もあるのだ。このあたりをふまえつつ、内容を見ていこう。
これまでにない、NDSらしい操作形態も積極的に取り入れる
古くは獣人・リカンツが支配する大陸だったアレウーラだが、後に獣人戦争と呼ばれる出来事をきっかけとして、リカンツの個体数が激減。結果として、弱小存在であったヒトが力を持ち、数を増やし、アレウーラの支配権を握ることになる。その後、ヒトはリカンツを撲滅しようとリカンツ狩りを始め、リカンツは人の姿を借りて暮らしを始めた。物語は、そんな日常から始まる。
主人公のカイウスは、15歳の少年。ある日、村で死にかけた騎士を助け、彼から赤い結晶を託されたことから、数奇な運命に巻き込まれていく。結晶に導かれるようにして、突如現れた謎の怪物“スポット”。それが村に大量に出現し、村人が全滅させられるのは時間の問題と思われたとき、カイウスの父親がリカンツに変身し、スポットを倒す。そして、カイウスに意外な事実を告げるのだった「私は本当の父親ではない」と。リカンツということが知られてしまい、首都の教会に連れ去られるカイウスの父親。彼は父親を助けるため、そして本当の両親を捜すため、首都を目指す。
ゲームを起動して最初に驚かされるのは、ムービーと思われる映像と歌だろう。スーファミ版のファンタジアの時も驚いたものだが、今回もやられた、といった感じだ。ROMカートリッジでここまでやるとは思わなかったし、個人的にも好きな曲なので、ちょっと感動してしまった。とはいえ、容量がかなり厳しいらしく、その画質はPSのムービーで使われていたMotionJPEGと、SSのCinepackの中間程度と思われた。それでも、十分見られるクオリティになっているのだから、その技術力には驚くばかり。しかし、無理に3Dポリゴンキャラが入っているような印象を受けたので、どうせならばフルアニメーションで流して欲しかったところだ。
ゲーム本編は、辺境の村フェルンから始まる。プレーヤーは主人公のカイウスを操作し、異端審問官のルキウスに両親を殺されてしまった幼馴染みのルビアとともに、最初は捕らわれた父親を助けに行く。これまでは携帯ゲーム機は2Dで、据え置き機は3Dという印象が頭にあったのだが、本作は3Dポリゴンで描かれたキャラたちが、画面を所狭しと駆け回る。さすがに、PS版のテイルズオブシリーズなどと比べるとグラフィック的に見劣りしてしまうが、それでもキャラをポリゴンで表現したことで、細かな動きも可能になっているため、より表現力が増したと言えるだろう。だが、2Dでやってもらいたかったというのも事実。ニンテンドーDSというハードの性能を考えるとポリゴンは厳しいし、ポリゴン全盛のご時世だからこそ2Dでいってほしかったというのは、考えすぎだろうか。
ニンテンドーDSの2画面を活かして、上画面にはマップと会話が表示され、下画面はメインフィールドのみとなっている。1画面単体でみると狭いが、2画面をうまく利用することで広いメイン画面を確保しているため、かなり快適にプレイできるのだ。残念なことと言えば、街や村の中ではLRボタンでカメラが回転しないこと。移動中に突然動けなくなったと思ったら、視点がスウッと変わっているといった感じだ。初めての時は戸惑うものの、慣れれば一時停止するのもそれほど気にならなくなるので、あまり問題ではないだろう。もちろん、止まらないにこしたことはないのだが。
フィールドマップ上では、カイウスが向いた方向へ自動的に視点がくるりと移動するが、LRボタンで任意に回転させることも出来る。ただし、移動中はLRボタンを押しても反応しないので、一度立ち止まってから視点を回すことになるのが若干手間になってしまう。
主人公を移動させ、ほかのキャラに接触させてAボタンを押すと、表示された吹き出しが上画面に向かって浮かんでいき、そこに会話ウィンドウが表示される。視点変更を余儀なくされるため、最初は落ち着かなかったものの、中盤も過ぎると自然と目で追っていけるようになっていたので、これはこれでありだろう。とはいえ、会話ならば画面が埋まっても良いと思うので、下画面に素直に表示しても良かったのでは? もしくは、オプション画面で会話ウィンドウの位置を上下から選択できるようにしておくのも、1つの手だったかもしれない。
ニンテンドーDSらしさであるもう1つの、タッチスクリーンを使った操作も、うまく取り入れられている。下画面に表示されているメイン画面をタッチすると、その場所まで移動してくれるのだ。タッチし続ければ、その方向へ移動し続けるので、かなり楽。NDSは長方形のため、手にフィットしない人にとっては十字キーで操作すると、すぐに手が痛くなってしまう。しかし、タッチペンを使えばそんな問題も心配なしだ。指でタッチすれば、いちいちタッチペンを取り出す必要もないので、ずぼらな人にお勧めだ。
もう1つ、タッチペンを使った独自の操作方法として料理がある。レシピと材料を入手すれば、その場で料理を作って食べることで、HP回復などのさまざまな効果が得られるのだ。この料理制作時に、タッチスクリーンが活用されている。レシピを選んで料理を作り始めると、これまでのシリーズでは結果が表示されたが、今作では選んだレシピごとに調理台が登場。タッチペンを使い、指示された操作を上手に行うと調理成功という、ユニークな仕掛けになっている。これがなかなかおもしろく、ついムキになってやってしまう。おかげで、材料はすぐに枯渇するし、所持金はみるみる減っていくしで散々だった(笑)。
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