泣きゲーだけど萌えもある!? PS2に舞台を移した智代のその後「智代アフター〜It's a Wonderful Life〜CS Edition」レビュー(1/2 ページ)

幾多もあるギャルゲーのうち、特に涙がちょちょぎれてしまうほど感動するゲームを“泣きゲー”と呼ぶのは、そのスジ(ギャルゲー好き)の人たちにとっては常識だ。2007年初の泣きゲー「智代アフター〜It's a Wonderful Life〜CS Edition」で、涙を流してみました。

» 2007年01月30日 00時00分 公開
[雛見沢秀一,ITmedia]

最近、泣いてますか?

 2004年にゲームブランドのKeyが作成したPCゲーム「CLANNAD」(クラナド)は、同ブランドの「Kanon」、「AIR」に続く“泣きゲー”として、多くのファンを泣かせたのは記憶に新しい。その1年半後、「CLANNAD」本編に登場したヒロインの一人、坂上智代の後日談を描いた「智代アフター 〜It's a Wonderful Life〜」が、これまたPCゲームとして登場した。

 坂上智代は、不良生徒たちとのケンカで無敗を誇るほど強いという力強さと、子供が好きという女の子らしさを兼ね備えた人気ヒロインだ。

 そして2007年1月25日、プレイステーション 2版として「智代アフター〜It's a Wonderful Life〜CS Edition」登場した。シナリオや新規イベントグラフィック追加など、PC版に比べてボリュームも大きくアップしている。

 ひとまず、本作の物語をざっと紹介しよう。社会人1年目になる主人公の朋也は、恋人である智代との幸せな日々を過ごしていた。そんな中、智代の弟である鷹文が、父親の隠し子である“とも”を朋也の家に連れてくる。ともの母親は行方をくらましているため、やむなく朋也と智代が一時的に面倒を見ることになってしまう。

 さらに、鷹文の元彼女である河南子(かなこ)が実家を飛び出し、朋也の家に転がりこんでくる。そんな感じで集まった朋也、智代、とも、鷹文、河南子の、5人の共同生活が描かれるのだ。

 彼らの“絆”を軸としたシナリオが印象的な本作。絆や家族といったフレーズが、筆者の心の琴線に触れる。プレイする際にはハンカチの用意を忘れずに。

画像 大きな山場だけに限らず、泣けるシーンが随所にちりばめられている。油断していると、ボロボロ泣いてしまうかも……?

 萌えゲー好きな筆者は、当然泣きゲーも大好き! ……なのだが、泣かせる展開に弱いため、プレイ中はもうボロボロ泣いてしまうだろう。特にKey作品のおかげでどれほど涙腺が緩んだか。しかし、男子たるもの人前で涙は見せたくない。やっぱり泣きゲーを仕事場でプレイするなら、みんなが帰った後を狙い、1人でしんみりプレイしたい。というわけで、残業(?)プレイリポートをお届けする。

 ちなみに本作は、テキストを読み進めつつ、要所で現れる選択肢を選んでいくオーソドックスなアドベンチャーゲームだ。ゲームオーバーになる選択肢はあるものの、基本的には一本道のストーリーのため、エンディングまでの道のりは難しくない。

さぁ泣かせてもらおうか! ……あれ?

 というわけで早速プレイ開始。「CLANNAD」で紆余曲折を経て結ばれた、智代と朋也。しょっぱなから、ひとつ屋根の下でラブラブモード全開な生活を送る様を、まざまざと見せつけられる。

 正直アツアツな2人を見ていて(特に朋也が)憎らしいくらいに感じるのは、それだけ彼らがまぶしく映っているからであろう。就職して1年目、徐々に仕事に慣れてやりがいを感じ始め、家に帰れば愛すべき人が夕飯を作って待ってくれている。なんとも幸せな情景ではないか! ましてや、その彼女が、ウェイトレスや水着といったコスプレを連発した日にはアナタ! “あれ? これって泣きゲーじゃなかったっけ?”とツッコミたくなるってもんだ。

画像 懸賞で当てたウェイトレスの衣装を智代に着せ、喫茶店ごっこに勤しむバカップル。注文も“キス”か“コーヒー”というカップル仕様(?)になっており、迷わず“キス”を選ぶのが健全な男というものだ。あえてまともに答えると……?
画像 海へ行くために、水着を買ってきた智代。“朋也が好きそうな水着を選んだ”と言うあたりが、なんともかわいらしいではないか! 個人的には、海やプールより、家の中で着る水着の方が、絶対価値があると思う

 恥ずかしいけれど、好きな相手のためなら……と、一生懸命になる智代と、それを面白がる朋也。そんな姉の痴態(?)を、偶然何度も目撃する弟の鷹文。それを目撃されて、へこむ智代。こんな楽しい生活がずっと続くならば、どれだけ幸せだったことだろう。筆者も智代のコスプレ姿を見続けられるなら、どれだけ幸せか……!!

 しかし、そんな妄想全開の日々も終わりを告げる。というか、実はここまでが本作のプロローグなのだ。お忘れだろうか、本作が泣きゲーだということを。決して智代のコスプレ日記ではないのだッ!! プロローグが終わると、鷹文が智代の腹違いの妹である、ともを連れてくる場面が始まる。

 愛する者のためにいつも全力投球で、周りが見えなくなる智代。最初のころは、その性格がコミカルに演出されており、“不器用だな”と思いつつもかわいく見守れた部分だった。しかし、智代のともへ対する態度を見ていると、徐々に“その性格では辛いだろうに”と思えてくる。

 というのも、ともを預かっているのは一時的なことで、いつかは母親の下へ送り返してあげる必要がある。ともにとっては、そちらの方が幸せだろうからだ。しかし智代は、ともを捨てた母親の元に返すことが本当に幸せなのかと、朋也に訴える。どうせなら、養子にすればいい、と盲目的な発言まで出始めるのだ。

 とにかく智代を見ていると、とても切なくなってしまう。捨てられた仔猫を拾ってくる子供を叱る、親のような気分になってしまうのだ。

 仔猫を拾ってきても、親は大抵、飼うことは駄目だと言う。かわいそうだと親も思うが、どうにもできない現実があって、それをうまく子供に諭さないといけない。拾ってきた子犬に情が移れば移るほど、別れが悲しくなるからだ。

 犬猫ならば、まだ感情のコントロールもできるだろう。だが、ともは人間で、さらに年端も行かぬ女の子。本当ならば、親から愛情をたっぷり注がれていなければいけない少女なのだ。智代に、別れが悲しくなるからあまり可愛がるな、なんて誰も言えやしない。例え話の親とかぶる朋也の気持ちが、痛いほど伝わってくるのだ。

画像画像 “両親の不和”という同じ境遇を持つともに共感したのか、母親のように接する智代。それにしても、子供好きの智代とはいえ、ともに対する感情移入の早さに、なんだか違和感を覚えた

 この時点で、大体先の展開が読めてくる。智代の元から、ともは去るんだろうなと。なんとも泣ける展開ではないか。悲しすぎる! ともや智代がかわいそうすぎるよ! と、1人仕事場で叫んでしまう筆者。いや、周囲に誰もいなくてよかったデスヨ……。

 ともを溺愛する智代の姿や、親の勝手な都合で振り回されるともの姿が、筆者の目頭を熱くさせる。どうして誰も傷つかない話はないのか!? と思ってしまう。人生は厳しい。

 しかし中盤あたりで、物語は予想もできなかった方向へ急展開。このあとともに対して、智代がとった行動とは……!? ここから先の物語は、ぜひプレイして自分の目で確認し、決着をつけていただきたい。筆者はプレイして、“なぜそこまで智代を追い込むんですか!?”と、原作者を問いつめてみたくなった。

シナリオに感じる切なさを何十倍にも引き立てるBGMたち

画像 本編をクリアすれば、サウンドモードで楽曲を聴くことができる。ボーカル曲も収録されているので、筆者はヘビーローテーションで泣きながら聴いてしまいました

 本作を語る上で欠かせないのが、作中に使われる楽曲だ。ピアノやアコースティックギターを使ったBGMが、切ないシーンを盛り上げてくれるのだ。

 原作を手がけたKeyというゲームブランドは、泣きゲーに不可欠な“泣かせるシナリオ”に加え、音楽という要素を重要視している。「Key Sounds Label」という自社レーベル会社を有していることからも、楽曲に対して非常に注力していることがうかがい知れるだろう。

 コアユーザーならば、楽曲を聞いただけでゲーム中のシーンがよみがえり、涙を流してしまうほどだ。もちろん、楽曲単体としての完成度も非常に高い。

 筆者としては、“オープニングとエンディングに挿入されるLiaの歌を聴いてくれ!”と、声を大にして言いたい。Liaというアーティストは、Keyの過去作とも密接につながりがあるため、Keyのボーカル曲=Lia、と結び付けられるほど。その澄んだソプラノボイスを本作でも十分に発揮し、抜群の歌唱力で、聴くものの心を鷲づかみにするのだ。

 ちなみにLiaの代表作は、「AIR」の“鳥の詩”や“Farewell song”、“青空”など。本作の前身にあたる「CLANNAD」では“Ana”という曲を歌っている。また昨今では、Key以外のゲームでも活躍している。コナミの音楽ゲーム「beatmaniaIIDX11 IIDX RED」では、“HORIZON”という曲をLIA名義で提供している。

 筆者がオススメする曲は、“鳥の詩”と“青空”だ。「AIR」をプレイしてからこの2曲を聴いたら、必ず号泣してしまう。未体験の方がいたら、ぜひ本作の楽曲と合わせて、一度は聴いてみていただきたい。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/29/news009.jpg 天井裏から変な音がする→スマホを突っ込んで撮影したら…… 映った“とんでもねぇ”モノに「恐ろしい」「何これ」と騒然の196万表示!
  2. /nl/articles/2404/30/news021.jpg 11カ月娘、帰宅したママの顔を見た瞬間……! ママ「うれしそうすぎてうれしすぎる」100点満点のお出迎えに「これは可愛いよ」
  3. /nl/articles/2404/29/news020.jpg 亡き父が植えた思い出のモミの木が巨大化→次男が伐採していると兄が現れ…… リアルな庭じまいの記録に共感と応援の声
  4. /nl/articles/2404/30/news129.jpg 「あのおじさん誰?」 お笑い芸人、解散後の激変ぶりにネット驚き「ピスタチオ 懐かし」
  5. /nl/articles/2404/27/news008.jpg 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  6. /nl/articles/2404/27/news009.jpg しぶとい雑草“ドクダミ”を生やさない超簡単な方法が115万再生! 除草剤を使わない画期的な対策に「スゴイ発見」
  7. /nl/articles/2404/30/news049.jpg 1歳女の子に赤ちゃんのころの服を着せてみたら…… 成長感じるほほ笑ましい姿に「プリプリww」「かわいすぎ〜!」
  8. /nl/articles/2404/29/news004.jpg アルミ板に水銀を垂らしたら……? 5000万再生の“衝撃的な実験結果”に「不気味」「一生忘れられない」
  9. /nl/articles/2404/29/news017.jpg 【今日の計算】「37+63×2−1」を計算せよ
  10. /nl/articles/2404/25/news123.jpg 「虎に翼」、「カムカム」の俳優が終盤に登場 急展開の予感に「ホント似合うよね、こういう役!!」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  2. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  3. しぶとい雑草“ドクダミ”を生やさない超簡単な方法が115万再生! 除草剤を使わない画期的な対策に「スゴイ発見」
  4. 天井裏から変な音がする→スマホを突っ込んで撮影したら…… 映った“とんでもねぇ”モノに「恐ろしい」「何これ」と騒然の196万表示!
  5. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  6. 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  7. 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  8. 顔の半分は童顔メイク、もう半分の仕上がりに驚がく 同一人物と思えない半顔メイクが860万再生「凄いねメイクの力」
  9. 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  10. スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評