焦るべからず。じっくり腰を落ち着けて戦国乱世に挑め:「信長の野望・革新withパワーアップキット」レビュー(3/3 ページ)
「織田信雄奮戦記」〜其ノ壱「いきなり滅亡の危機」
地方統一モードは、シナリオ、地方、担当大名によって難易度が激しく変化する。例えば「関ヶ原合戦」の「関東」。徳川家が7カ国のうち6国を支配しており、残った1国を佐竹家が抑えているという状況。徳川家を選べば楽勝だろうし、逆に佐竹家を選べば茨の道は必至だ。
いろいろ面白そうで目移りするが、シナリオは「覇王の後継者」、地方は「甲信・北陸・東海」、担当は「織田信雄」を選択した。信雄は凡将として歴史家の評価が低い。だからこそ、あえてそんな人物に偉大な父の跡目を継がせてみたい。これぞ、シミュレーションゲームならではの楽しみではないか。
とはいえ、正直言ってこれはあんまり初心者向けの選択ではない。何しろ、状況が厳しいのだ。
「覇王の後継者」のスタートは1582年12月。賤ヶ岳の戦いが起こる直前である。ご承知の通り、この戦いでは北陸を地盤とする柴田勝家と近畿を制覇した羽柴秀吉が激突したわけだが、地方モードにして「甲信・北陸・東海」だけに限定すると、また状況が変わってくる。
当然勝家が強く、選択可能な8勢力中、初期兵力数ナンバー1を誇る。ライバルとなる秀吉は地域の関係で登場せず、それに代わってナンバー2の地位には徳川家康がいる。これもかなり実力者で武将の質では勝家に勝っているだろう。ナンバー3は上杉景勝。やや押され気味とはいえ、まだまだ実力は侮れない。勢力こそ小さいものの、真田家は絵に描いたような少数精鋭で台風の目と呼ぶべき存在だ。
残る4勢力が弱小の部類に入るのだが、織田信雄はこの中でもワーストを競っている。初期兵力数が最下位で、家康と接している。後に小牧・長久手の戦いで手を組む両者だが、この時はまだ同盟以前。もし攻め込まれたらひとたまりもないだろう。
立地条件が厳しく、兵数も少ないうえに人材がまた悲しい。内政は頭数で勝負するとしても軍事が泣きたくなるレベルだ。この能力ではとてもまともに戦えない。
低い能力値を補完するには技術が一番有効だ。中でも海外からもたらされる最新の技術は非常に効果が高い。ところが南蛮商人と取引するためには「港」を支配下に置く必要があるのだが、これが信雄にとってはもの凄くハードルが高いのだ。
全国モードなら志摩にある鳥羽港が狙い目なのだが、近畿に属しているので未登場。一番近い港は浜松港だが、ここは徳川家ががっちり押さえていて、とても手が出ない。直線距離では越前の敦賀港も近いが、近畿に入っている近江が通れないために美濃→飛騨→越中→越前と気の遠くなる回り道をしなければならない。残る2港はもともと遠いし、そこまで行けるくらいなら苦労などしない。というわけで、南蛮技術を手に入れるのも困難を極める。
「織田信雄奮戦記」〜其ノ弐「徳川家との全面対決を辞さず」
兵無し、人材無し、技術無し。これを突破しなければ滅亡は避けられない。どうすべきだろうか。
最初に考えねばならないのが徳川家との関係だ。常識的には同盟を結びたい。だが、徳川家の人材はあまりにも強力すぎる。信雄が同盟を結ぶとその矛先は残る隣接勢力である真田家に向くだろうが、ここで家康が勝って昌幸や幸村を吸収したらえらいことになる。勝家と景勝は最初から激突することが予想されるうえ、相互の戦力が拮抗しているから疲弊してしまう可能性が高い。もしそこへ強力な徳川軍プラス真田の名将たちが襲いかかったら? 甲信、北陸を徳川家が瞬く間に支配してしまう恐れもある。そうなったら、勝ち目はない。
以上の危険性を考え、ここではあえて徳川家と対決する道を選んでみた。まあ、リプレイを書く以上、強者にへつらってちまちま領土を増やすコバンザメのようなプレイをやっても仕方ない。勝ち負け以前に派手に動いてこそリプレイだ。かくして、凡将・信雄の無謀な戦いが幕を開ける――。
「織田信雄奮戦記」〜其ノ参「清洲要塞化計画」
いよいよプレイスタート。
まずは全員総出で建設に取りかかる。一番の急務は「兵舎」。早い段階で徳川軍に来襲されないためには、こけおどしでもいいから数がいる。
次いで必要物資の確保。資金源となる「市」と物資の売買に必要な「商館」を建て、兵糧はなるべく「畑」に頼る。収穫量は「水田」のほうが大きいが、川沿いでないと建てられないうえに秋しか収穫がなく、その時に悪天候イベントが起こると収穫量がゼロになってしまう。これが痛すぎる。畑なら毎季節少しずつ収穫があるので突然の戦争にも耐えうる。
ただし、これらの施設を建てる際、三河からの街道に沿った一帯は空けておく。後で迎撃用に「鉄砲櫓」を建てるためだ。信雄の居城である清洲城は堅城ではあるが、徳川軍の強さを考えると、利用できる防御手段は最大限用いねば。
かくして開始から約1年半。清洲城周辺の開発が終了し、今後の地盤となる街が出来上がった。その仕上がり具合は次の通り。
「織田信雄奮戦記」〜其ノ四「弟を降して兵力増強」
ここからが肝心である。最大の問題である徳川家との兵力差が縮まっていない。それも当然で相手は城を3つ持っている。対してこちらは1つ。これでは追いつくはずがない。これはもう、どこかを攻略して領地を増やすしかないだろう。となれば、狙いは信孝しかない。岐阜城を攻略して地盤を強化するのだ。
家康を牽制できるだけの兵力を残したうえで岐阜城攻略軍を編成するには、それなりの兵数が必要になる。しばらく我慢して兵を増やす。その間、城の増築や技術研究に勤しんで守りを固める。間隙を縫って、岐阜城攻略の橋頭堡となる支城・小牧山城を建設するのにも成功した。これは大きい。
1986年夏、姉小路軍が岐阜城を襲撃した。守備兵は約9000に対し、攻撃側は約1万5000。城からは信孝自ら5000強を率いて迎撃に出た。頼綱対信孝の当主対決は損耗率で信孝が勝っていたが、もともと数が半分以下なのでダメージも大きい。やがて姉小路軍は敗退したが、これを信孝が追撃し、飛騨への街道を進み始めた。岐阜城に残った兵力はわずか3000余しかいない。
好機到来である。
すぐさま小牧山城に手勢を集め、約1万2000の兵で岐阜城を攻撃する。櫓からの攻撃や慌てて戻ってきた信孝との戦いで際どい展開になったが、どうにか城の制圧に成功。これで濃尾の統一に成功した。なお、信孝は捕虜にした後、登用して自軍の武将とした。元臣下たちも大した面子こそいないが、とりあえず拾っておく。これから岐阜城下を再開発するのだから、時間短縮のためにも人出が欲しい。
その時である。ついに徳川軍が動いた。本多忠勝を先陣に酒井忠次、大久保忠世、そして家康本人という有名どころを揃えての攻撃。敵ながらうらやましくなる陣容だ。総勢約3万5000。一方、清洲城の守備兵は約9000。敵の4分の1程度という劣勢だが、鉄砲櫓だけはぎっしりと建ててある。さて目論見はうまくいくか……。
鉄砲の発射を告げる効果音が絶え間なく鳴り続く。そして敵兵が見る見るうちに減っていく。想像以上の威力だ。結局敵は攻撃らしい攻撃もできないまま、敗退していった。「革新」では敵部隊を殲滅しても全員が死亡するわけではなく、大半は傷病兵として出撃した城に戻る。それでも1万余の兵を討ち取ることに成功し、徳川軍は6万から5万弱にまで落ち込んだ。大戦果といっていいだろう。
安堵しつつ岐阜城の再開発を始めていると、徳川軍が立て続けに出撃した。今度の目標は真田家の上田城。約1万8000の守備兵に対し、約4万の攻撃軍が襲いかかる。城からは幸村が迎撃に出陣。スター級武将同士の激突だけにどうなるのかと思ったが、いやあ、真田は強い強い。城に籠もっている昌幸が敵を計略で弱体化させ、そこへ幸村が攻めかかる。絶妙のコンビネーションである。たまらず徳川軍は敗走。2連敗の影響で兵力は一気に約3万2000にまで落ち込んだ。一方、信雄軍は約2万8000。敵の自滅でようやくトップの背中が見えてきた。いよいよ、ここからが正念場である。
こうして信雄は、弱小大名にとって鬼門となる序盤をなんとか乗り切った。ここからは真田家と共闘しながら徳川家を抑え込み、隙を見ながら北へと勢力を拡大していくという流れが理想的だろう。姉小路家を降し、北陸に進出できれば、さらに支配地も増え、武将の質も上がっていくはずだ。
このシナリオ、今回は信雄でプレイしてみたが、大名家を変えれば、プレイ展開も印象もまったく違ってくるだろう。それはすべてのシナリオ、すべての地方についてもいえる。このように基本となるゲームシステムを構築し、後はシチュエーションの変化で遊びの領域を拡大していくのは、まさにシミュレーションゲームならではといえるだろう。「信長の野望」はすでに四半世紀に及ぶ息の長いシリーズになっているが、決して古いだけのタイトルではない。そこには常に新しい要素を盛り込んでいく冒険心があった。サブタイトルの通り、「革新」こそが「信長の野望」の根本なのである。歴史シミュレーションに留まらず、戦略シミュレーションを代表するシリーズとして、これからも楽しませてもらえることを願ってやまない。
「信長の野望・革新 with パワーアップキット」 | |
対応機種 | プレイステーション 2/Wii |
ジャンル | 歴史シミュレーションゲーム |
発売日 | 発売中 |
価格(税込) | 1万290円(ツインパックは1万4490円) |
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