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シンフォニック=レイン
 
プレリュード04 『Liselsia』

PHOTO 三年生ともなると,それなりに自分のこともわかってくる。
 学生の身分でおこがましいと,きっと私の両親なら言うだろう。そして,がんばれと。

 でも現実はそれほど甘くはなく,事実,私は落ちこぼれだった。

 私がフォルテール科に進学したのは,単に魔力があるからというだけに過ぎない。その才能に自惚れ,一時は本気で音楽家になろうと考えたこともあった。しかし才能なんてものは実際にはなく,あるのはただ,資質というか,資格だけだった。それを使って何をしたいかという部分が全く抜けていたので,今のこの結果は,当然の成り行きともいえる。
 私はただ,そんなことを考えながらぼうっと廊下を歩いていた。卒業発表がもうあと一,二ヶ月まで近づいているというのに,まだパートナーさえ決まっていない。
 今日は休みとはいえ,練習をする生徒のために,いつでも学院の門は開いている。焦燥感だけは人一倍あったから,私は練習と称して校内をうろついている。

 すぐ近くから歌声のようなものが聞こえて立ち止まると,廊下のすぐ先の曲がり角からから急に人影が現れた。

「きゃ!」

 誰かが……多分女の子が私にぶつかって,小さな声を上げる。私は女の子にしては大柄だったから,そんなにかわいい声もあげず,ただ何だろうと思っただけだった。ちょうど胸の辺りにある制服のボタンが顔に当たったのか,その女生徒はおでこを押さえて泣きそうな顔をしていた。方からずり落ちそうになってしまったフォルテールのケースを抱え直しながらとりあえず謝る。

「あ,ごめんなさい」
「うぅ……あ……はい。あ,いえ,こちらこそごめんなさい」

 彼女はぺこり,と深くお辞儀をした。礼儀正しい子だ。それに,身体つきもずいぶんと小さい。よく見ると制服を着ていなかったから,うちの生徒ではないのかもしれない。

「あの……あなた,うちの生徒?」
「あ……いえ……あ,違うんです。今度の春から,ここに入学することになりました……んですけど」

 私の制服を見て,先輩だったと悟ったらしい。緊張を増した様子でそう答えた。それがなんだかかわいらしく,彼女の気をほぐすために優しく続けた。

「そんなに緊張しないで。とりあえずおめでとう。私は今年卒業だから,一緒にはならないけど,あなたはがんばってね」
「……あなたは?」

 考えていたことが思わず口に出てしまった。これ以上話しても愚痴っぽくなるだけだったので,私は笑ってごまかした。そして,簡単な疑問を口にする。

「そう言えば,さっき歌ってたよね」
「あ……いえ」

 なにが恥ずかしいのか,彼女はうつむいて否定した。そうして下を向くと,身長の違いのせいで,顔は全く見えなくなる。

「歌……好きなの?」

 彼女はその質問に,しばらく考え込むように黙った後,小さな声で答えた。

「……はい」
「あはは。緊張しなくていいって。好きなのはいいことだよ」

 そう,とても良いことだ。

「ところで,こんなとこでなにしてたの?」
「あ……父に連れられてきたんですが,用事があるようなので時間を潰してくるように言われまして」

 なんとなくだったけど,この子に興味がわいたっていうのもあった。気づけば気さくに話しかけてしまっている。話し相手が欲しかったのも,きっとある。

「じゃあ,まだ暇なの?」
「え? あ,はい。あと一時間くらいは」
「なら,少し付き合わない? 案内くらいはできるよ」

 ふとした気の迷いだろうか。これからこの学院で学ぶであろう女生徒に,校内を案内してあげようという気になった。なにより,さっき少しだけ聞いたソプラノの美しい歌声が,まだ耳に残っているような気がする。
 もう一度聞いてみたいと思わせる,そんな声だった。でもこの子は内気そうで,なんだか歌ってくれる気がしない。でも,だからこそ聞いてみたいとよけいに思わせた。
 半ば強引に連れ出すようにその手を握る。

「え? あ……」
「あなた,名前は?」
「リ……リセ……です」
「そっか,よろしく。私はラッセン。ラッセン・ナート」

 それから,三十分くらいは校内を歩いただろうか。その頃には,だいぶリセちゃんの態度も柔らかくなっていた。

「これで,一応最後かな」
「はあ……結構広いんですね。それに,設備もしっかりしてます」

 感心するように彼女はそう言い,最後に寄った練習室を眺めていた。狭い練習室ながらも,アップライトではなくグランドピアノを置いてあるあたりが,この学院の凄いところだろう。数えたこともないが,廊下に立ち並ぶ練習室全てがそうなのだから,校内にあるピアノの数は相当なものだった。

「まだ,時間はあるよね?」
「はい。あと三十分くらいは」
「ならさ,ちょっと寄りたいところがあるんだ」
「寄りたいところ?」
「まあね」 次のページへ

 

 

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