東京の山奥で「ホームスター ポータブル」を片手に愛をさけぶ(2/2 ページ)

» 2006年10月31日 03時11分 公開
[立花裕壱,ITmedia]
前のページへ 1|2       

2人だけの高尾山中腹

 笑っているうちに、2人を乗せたケーブルカーは終点へ着く。ホームを出ると、登山客とは2、3人すれ違う程度。立花たちはベンチがいくつも置いてある開けた場所へ向かった。暗闇の向こうに現れたのは……満天の星空、ではなく夜景だった。

彼女 きれい、見て! この夜景!

 確かに息を呑むほど高尾山から見た夜景は美しかった。しばらくうっとり見つめる彼女。それを見つめる筆者。が、肝心の星は……。雲の合間からポツンポツンと見えるだけだった。

画像 昼は遠足の小学生や行楽客でにぎわうのだろうが、はっきり行って夜はガラガラ。カップルにはもってこい!?
画像 筆者の腕がいまひとつであるためお伝えしきれないものの、夜景はかなりきれい。夏に夜景を楽しめるビヤホールが開くのもうなずける

彼女 星はあんまり見えないね。

立花 とりあえずGPSを差して現在地の星空を出してみよう。

 GPSでの測定には、天気が悪かったためか、正味5分くらいかかったろうか。コンパスを使って方角を調べ、画面を合わせる。

画像画像画像 別売の「PSP用GPSレシーバー」を使えば、日本だろうが海外だろうがその場の星空を映し出せる。すばらしい

立花 こんな感じかなあ。

彼女 もしかして、あの一番明るい星ってベガ?

立花 うん、場所的にはそうかもね。

彼女 じゃあ、あっちはデネブかな?

立花 うーん、そうかも(自信がない)。

彼女 残念だなあ。雲がなければこんなに見えたのに。

立花 本当はもっと奥の陣馬山まで行けばよかったんだけどね。遠いから。

彼女 そっか。でも、今度星のよく見えるところに行きたいね。南の島とか。

立花 南の島か、いいねえ。

彼女 流れ星も見れそうじゃない? 行けたら行こうよ。

 話の流れで、なんとなく旅行の約束をした、のか!? 社交辞令でもちょっとうれしい。これはもしや愛を語っている?

立花 あ、そうだ。観測場所の設定を海外にも移せるよ。ロンドンとかウランバートルとか。あと、エアーズロックにすれば、南半球だから変わった星座も。ほら……かじき座でしょ、ちょうこくしつ座でしょ」

彼女 彫刻室だなんてヘンだね。

立花 世界の中心で彫刻を削る!!

彼女 アハハ、何それ。エアーズロックだから?

 筆者がPSPの左端を、彼女が右端を持って、寄り添うように画面を見つめる。周りには誰もいない。不思議な時間が流れた。

立花 こっちがプラネタリウム風の解説モード。どれか聞きたいのある?

彼女 「春の星座」、「秋の星座」、「夏の大三角」、「流星」、「石垣島の贅沢な空」……。どれがいいかなあ。

 20個の番組のうちから「秋の星座」を選んだ。

ナレーション 「秋の夜空では、ペガススの四辺形という四角形を目印に、星座を見つけていきます。2等星を3つと、3等星を1つ結んでできる四角形は意外にはっきりと分かります……」

 ピアノの静かなBGMと落ち着いた女性のナレーションが流れ、ゆるゆると心が解放されていく気がした。10月の終わりにしては寒くもなく、気持ちがいい。

立花 こうしてぼーっと眺めてるのもありだよね。

彼女 なんか2人でぜいたくな時間を過ごしてるって感じ。

 テーマ音楽であるホルストの「木星」にしばし聞き入る。

画像 アメリカのフェアバンクスでは星空とオーロラの競演にうっとり。昼光・自然現象は表示・非表示の切り替えが可能
画像 日本では見られないあこがれのサザンクロスも、シドニーならバッチリ。つけっぱなしでデスクのそばに置くと癒しツールにもなる。ちょっとした旅行気分

画像 気になった天体があったらカーソルで選んで解説を見よう。ついこの間惑星から降格した冥王星の解説もしっかり入っているのに感心
画像 ファンタジーシアターの番組のひとつ、夏の大三角形から数々の星座を見つける「夏の星座」。プラネタリウムを思い出して懐かしい

 2時間くらいダラダラしただろうか。相変わらず夜空には雲がかかり、星の出番はチラホラだった。お酒がなくなったのをきっかけに、その場をお開きにする。ケーブルカーの終電は17時45分。とっくの昔になくなっている。

立花 ここから歩いて戻るよ。はい、これ。懐中電灯。今日100円ショップで買ってきた。

彼女 探検みたいだね。

立花 遭難しないように。

 帰り道は目の前のカーブが分からないほどの真っ暗だった。つま先が痛いのをガマンして坂をひたすら下りる。闇に吸い込まれて、どこか異世界へ行ってしまいそうだ。彼女のドキドキが伝わってくる。“吊り橋効果”、そんな単語が頭に浮かんだ(説明しよう。吊り橋効果とは揺れる吊り橋にいる男女が、恐怖のドキドキを恋愛のドキドキと勘違いし、恋に落ちてしまう心理学の理論なのだ)。

彼女 星、見られなかったね。仕事大丈夫?

立花 ……あ、うん、まあなんとかなるでしょう(そもそも愛を語るのがテーマだったし)。また今度、星の見えるところに行こうよ。

彼女 いいね、誘ってよ。夏休みに南の島にでも。

 川のせせらぎが聞こえ、民家が見えたところでゴール。余韻を残しつつ、京王線の駅へと着いた。

彼女 今日は楽しかった。なんか子供のころに戻ったみたい。

 ……当たり前だが、何も起こらなかった。結局、愛を語れるかどうかはその人次第だが、「ホームスター ポータブル」は星へのピュアなあこがれを思い出させてくれる貴重な存在だ。そんなロマンに満ちたひとときを大事な人とも共有できる。「ホームスター ポータブル」は大人の癒し系ツールであると同時に優れたコミュニケーションツールにもなる、のではないか。本物の星がもっと見えればよかったのだが……。

画像 セーブができず、いつでも起動当初は初期設定に戻り、星空再現モードは新宿から始まるのがちょっと残念
画像 通常、時間変更はB.C.9999〜A.D.9999年なら分単位で任意の設定が可能。少しずつ位置は変えつつ、いつまでたっても星はそこにあることにロマンを感じる
(C)SEGA
「ホームスター」(TM)は、株式会社セガトイズの商標です


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/03/news002.jpg 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 同情せざるを得ない衝撃の光景に「私でも笑ってしまう」「こんなん見たら仕事できない」
  2. /nl/articles/2405/02/news004.jpg 80代一人暮らし女性の“その都度が大事”なキッチンお掃除術 毎日少しずつ……の習慣に「尊敬しかない」「すごくやる気をもらえます」と称賛の声
  3. /nl/articles/2405/02/news023.jpg 【今日の計算】「2+7×9−3」を計算せよ
  4. /nl/articles/2405/01/news013.jpg IKEAの新作カーテンが「家中これにしたい」ほどすてき!→どうやって付けているの? 垢抜けインテリア術に視線集中「すっごいかわいい」「色味が最高」
  5. /nl/articles/2405/01/news131.jpg なんでそうなった? のこのしまアイランドパーク園内看板の名称が「俺は間に合わなかったがトイレはあっちだ君」に決定
  6. /nl/articles/2405/01/news128.jpg 「笑い止まんないw」 少女漫画風の顔をメイクで再現したら……? 衝撃の“おもしれー女”が爆誕 「笑うと怖!!」
  7. /nl/articles/2402/15/news019.jpg 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほど様変わりした光景が379万表示「そこだけボッ!ってw」
  8. /nl/articles/2402/21/news158.jpg 業務スーパーの“高コスパ”人気冷凍商品に「基準値超え添加物」 約1万5000個販売……自主回収を実施
  9. /nl/articles/2405/02/news106.jpg 【今日の難読漢字】「鱸」←何と読む?
  10. /nl/articles/2405/01/news104.jpg 「そっち使うの?!」「これは天才」 さびだらけの鉄くぎをぐつぐつ煮込むと……? DIYに役立つ“まさかの使い道”が200万再生
先週の総合アクセスTOP10
  1. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  2. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  3. しぶとい雑草“ドクダミ”を生やさない超簡単な方法が115万再生! 除草剤を使わない画期的な対策に「スゴイ発見」
  4. 天井裏から変な音がする→スマホを突っ込んで撮影したら…… 映った“とんでもねぇ”モノに「恐ろしい」「何これ」と騒然の196万表示!
  5. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  6. 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  7. 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  8. 顔の半分は童顔メイク、もう半分の仕上がりに驚がく 同一人物と思えない半顔メイクが860万再生「凄いねメイクの力」
  9. 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  10. スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評