惨劇は進化する――舞台をPS2に変えた“正解率1%の謎”の魅力「ひぐらしのなく頃に祭」レビュー(2/3 ページ)

» 2007年03月01日 12時00分 公開
[雛見沢秀一,ITmedia]

「鬼隠し編」をレッツプレイ!

 まず、シナリオをざらっと解説しよう。物語の舞台は、昭和後期の山奥に位置する寒村、雛見沢村(ひなみざわむら)だ。この村では、毎年決まった時期に、奇怪な連続怪死事件が発生する。この村に引っ越してきたばかりの主人公、前原圭一(まえばらけいいち)は、その素朴な生活を楽しみながらも、徐々に事件へと巻き込まれることになる。平凡に見えた日常に、徐々に牙をむく狂気の陰。今まで白だと思っていた物は、実は黒だったのかもしれない。何も信じられなくなる状況で、やがて物語は終末を迎える。圭一が体験する物語を通じて、その真相を解き明かすのだ。というわけでゲーム開始ですよ!

 ……と始めたはよいが、いきなり「おや?」と思わせる展開に遭遇した。原作では物語冒頭にいつも表示されていた謎の詩、“フレデリカの詩”が表示されないのだ。原作ファンにとっては、本編とどうからんでいるのか、まったく想像がつかないこの謎の詩を見て、物語に突入するというのが正当(?)な流れ。いきなりつまづいたような感覚に陥る。

画像 前にも説明した通り、前半パートはギャルゲーっぽいほのぼのシナリオが続く。rato氏の描く萌える絵柄の方が原作よりもよく合う

 気を取り直して話を進めていくと、主人公である圭一の女友達、竜宮レナ(りゅうぐうれな)と園崎魅音(そのざきみおん)が登場。原作のファンとしては、やはり作画が違うことに違和感を覚える。……しかし、これはこれで萌え萌え〜な感じなので、アリなのでは? と思えなくもない。

 その後は、しばしほのぼのとした展開を楽しむ。圭一と仲間たちは、とても仲がよく、困ったことがあれば、お互いを助け合うことがきる。年齢は大きく違えど、信頼できる仲間同士だった。それは、小さな村が持つ村人たちの連帯感であったり、圭一たちの通う学校が、少人数のため学年混在だから、という理由もある。お昼の時間にみんなで弁当箱を出し合ってみんなでつつきあったり、まだ土地勘のない圭一のために、レナや魅音が村を案内してくれるエピソードを見ていて、それがひしひしと伝わってくる。

 そんな仲間たちとずっと暮らすことができれば、どれだけ幸せだろうか。そんな気すら思い浮かんでくる前半パート。さらに言えば、圭一以外は全員女の子。放課後にゲームをして遊ぶ“部活動”の罰ゲームで、ネコミミをつけたり、スクール水着で授業を受けさせたりと、なにかと萌え〜なシチュエーションも捨てがたい。

 そんな感じで前半パートを楽しんでいると、ついに“選択肢”が登場した。片方は明らかにその後の展開が予想できるモノだったので、あえてもう一方の選択肢を選んでみた。すると予想通り、原作には存在しなかった展開になっているではありませんか。この選択肢というシステムを追加したことで、原作ファンには、原作とは違ったエピソードが楽しめるし、知らないユーザーにとっては“どっちが正解の選択肢だ?”と考える楽しみが増えていると思う。

 そんなこんなで訪れた、“綿流し祭”の日。 “綿を川に流す”ことから“綿流し”と呼ぶばれるこのお祭では、5年前から毎年、誰かが変死し、行方不明になるという“オヤシロ様の祟り”が起きる。

 この“綿流し祭”の日は、ゲーム上で大きな意味をなす。この日以降、強烈なシリアスパートへ急転する。ここからが「ひぐらし」の真骨頂なのだ。「ひぐらしのなく頃に祭」は、前半パートでどの選択肢を選んだかによって、後半パートの内容が変化する。どの編へ突入したのかな、とワクワクしながら進めていくと……突然「鬼隠し編」の予告ボイスが流れ始めた! こんな演出、原作にはなかったぞ!? と驚きながら画面に見入る。そして画面には「鬼隠し編」のタイトルが現われ、冒頭では現われなかったあの「フレデリカの詩」が、今ここで表示されたのだ。……この映画の予告のような演出には、正直驚かされた。

画像画像 各章には前半パートが終わると、このようにタイトルと予告ボイス、フレデリカの詩が表示される。さらに「澪尽し編」ではオープニングソングが挿入されるのだ

 ついに、「鬼隠し編」のシナリオが始まる。お祭で共に遊んでいた人間が“喉を自らかきむしる”という不可解な死に方をしてしまったと、刑事が圭一に伝える。さらに、魅音たちが事件に関係しているかもしれないと聞かされた圭一は、仲間たちに対して疑心暗鬼に陥ってしまう。ここでふと、前半パートでは音声が当てられていなかった圭一に、ボイスがあることに気がついた。これはどういうことだろうか。終盤で聴くことになる主人公の叫びを、音声入りで聴けということだろうか?

 そして迎えた「鬼隠し編」最初の山場。学校の帰り道に、レナに「誰と会っていたのか?」と問われるが、圭一はとある理由でごまかそうとする。だが、そのウソは、レナに見破られてしまう。レナの目が、うつろなものに変わり始めた。レナのイベントグラフィックが表示され、「嘘だよね?」と圭一に問いただし始めるレナ。素肌にナイフを突きつけられたような緊張感が漂う。圭一の心情が自分に乗り移ったように緊張し始める筆者、レナの問いを否定する圭一。そしてレナはついに表情を歪め、フラッシュバック、効果音とともに「嘘だッ!!」と叫ぶ!

画像 “女の子の上目遣い”という萌える仕草が、恐怖を演出する仕草のひとつに豹変。前半パートなら明らかに萌えるシチュエーションなのだが、この後画面が切り替わって……

 原作で話題を呼んだ名シーンは、「ひぐらしのなく頃に祭」では、このような演出に変わっていた。このシーン、原作はもちろん、アニメや漫画でも趣向を凝らして見せてくれたのだが、これらの中で一番面白いな、と思わせる仕掛けだった。筆者は怖がることはなかったが。……嘘じゃないですよ?

 ホラーな展開はさらに続く。だが、かわいらしい声のせいと、専用のイベントグラフィックが用意されたことで、逆に恐怖感が薄れてしまったように感じた。原作はシンプルな作画ではあったが、そのぶん、逆にユーザーの想像力を刺激したのである。古参のウィザードリィファンならば、この気持ちが分かってくれるだろうか。


画像 このような魅音の鬼気迫るドアップでプレイヤーを怖がらせる以外にも、効果音や画面スライドなどの演出効果を用い、恐怖度をさらに跳ね上げる……

 そして原作どおり多くの謎を残し、最後を迎え「鬼隠し編」は終了した。この終わり方が、なんともアッサリしており、正直肩透かしを食らってしまった。原作では、シナリオが終わる瞬間に「ひぐらし」のタイトルが「ドーンッ!!」と効果音とともに現われて終わる。その演出がとても好きだった分、寂しかった。

 他のシナリオを遊ぼうとタイトル画面に戻ると、先ほどまではなかった“主人公選択画面”が出現しているではないか。本作はゲームの進め具合によって、赤坂衛(あかさかまもる)が主役の「暇潰し編」や、園崎詩音(そのざきしおん)が主役の「目明し編」が新たに選べるようになっているのだ。


画像画像 どうやら特定のシナリオをクリアすることで、選択できる主人公が増えるようだ。シルエットで大体誰かは分かるが、右端の2人はやはり「澪尽し編」の主人公?

 というわけで、再びプレイ開始。2回目のプレイでは、新シナリオ「盥回し編」へ進むことができた。他のシナリオでは、主人公は惨劇に対して、立ち向かうか回避する方法を常に考えていた。しかしこのシナリオでは、“もし惨劇に挑まなかったら?”という可能性を描いている。

画像 惨劇に挑まなかった場合、どういうわけか梨花に見放されてしまう。なぜ彼女が“挑まなかった”ことを知っているのだろうか?

 どちらかといえば問題編に分類される、この「盥回し編」。原作を知っている人なら、こんな“if”もあったのか、という喜びも感じることができる。ただし、一番ヒントの少ないシナリオなので、「ひぐらしのなく頃に祭」から本作に入ったファンは、「なんじゃこりゃ?」と頭を疑問符が埋め尽くすことになるだろう。

 「ひぐらし」は、圧倒的なボリュームを誇る作品だ。残念ながら時間の関係上、すべてのシナリオを遊びつくすことはできなかった。特に「澪尽し編」は、PC版の最終章「祭囃し編」とはまったく異なるエピソードなので、とても気になっている。「ひぐらし」風に言えば、続きは仕事抜きにじっくり堪能しろという“オヤシロさまのお告げ”かもしれないので、これでよかったのかもしれない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/01/news138.jpg イオンモールで販売「シフォンケーキ」にカビ発生、5000個回収へ “下痢”の報告で調査中……出店企業が謝罪
  2. /nl/articles/2402/21/news158.jpg 業務スーパーの“高コスパ”人気冷凍商品に「基準値超え添加物」 約1万5000個販売……自主回収を実施
  3. /nl/articles/2405/01/news092.jpg “スケスケ成人式コーデ”が物議のモデル、「3度見される服」を披露 「コレは見ちゃうわ」「洗っても大丈夫なのか」の声
  4. /nl/articles/2405/01/news095.jpg 秋元康、AKB48卒業の柏木由紀に送った手紙が物議 “冒頭の一文”に「昭和丸出し」「嫌すぎる」
  5. /nl/articles/2405/01/news013.jpg IKEAの新作カーテンが「家中これにしたい」ほどすてき!→どうやって付けているの? 垢抜けインテリア術に視線集中「すっごいかわいい」「色味が最高」
  6. /nl/articles/2405/01/news093.jpg 500円玉が1つ入る「桔梗のお花ケース」が100万件表示超え! 折り紙1枚で作れる簡単さに「お小遣いあげるときに便利」「美しい〜!」
  7. /nl/articles/2404/30/news015.jpg 【今日の計算】「500×99」を計算せよ
  8. /nl/articles/2404/30/news165.jpg 「これは変態だ」 職人が“鉄の塊”から作った「はぐれメタル」がガチすぎる 狂気の手作業に驚き「いかれてるw」
  9. /nl/articles/2405/01/news104.jpg 「そっち使うの?!」「これは天才」 さびだらけの鉄くぎをぐつぐつ煮込むと……? DIYに役立つ“まさかの使い道”が200万再生
  10. /nl/articles/2405/02/news013.jpg 2歳娘、自分のバースデーフォトをセルフタイマーで…… プロ顔負けの仕上がりに「すごーーーーーーー!!」「天才すぎます」と称賛の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  2. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  3. しぶとい雑草“ドクダミ”を生やさない超簡単な方法が115万再生! 除草剤を使わない画期的な対策に「スゴイ発見」
  4. 天井裏から変な音がする→スマホを突っ込んで撮影したら…… 映った“とんでもねぇ”モノに「恐ろしい」「何これ」と騒然の196万表示!
  5. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  6. 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  7. 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  8. 顔の半分は童顔メイク、もう半分の仕上がりに驚がく 同一人物と思えない半顔メイクが860万再生「凄いねメイクの力」
  9. 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  10. スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評