プレイするほどに勇気付けられ、心を打たれる――11年ぶりに「ナイツ」が復活「ナイツ〜星降る夜の物語〜」レビュー(1/3 ページ)

1996年にセガサターンで発売され、多くのゲームファンを魅了した「ナイツ」。それ以降、続編の登場を待ち望まれながらも、リメイクすらされないままに長い年月が過ぎたが、ついにこの冬、「ナイツ」が帰ってきた!あのファンタジックな夢の世界をもう一度飛び回れると思うと、それだけで胸がいっぱいになる。

» 2007年12月14日 00時00分 公開
[小泉公仁,ITmedia]

名作との呼び声も高いのに、なぜか11年も沈黙を続けた「ナイツ」

 1996年の夏に発売された「NiGHTS(ナイツ) into dreams…」は、個人的にも特に思い入れのある作品だ。当時は、プレイステーションとセガサターンが激しいシェア争いを繰り広げていた頃であり、そこにNINTENDO64も発売された直後だった。「ナイツ」は、「ソニック」シリーズなどでおなじみのソニックチームが制作し、同年の夏休み商戦におけるセガサターンの目玉ソフトとして、大々的なプロモーションとともに世に送り出された。

 「ナイツ」の魅力は、夢の中を舞台としたファンタジックな世界観や、“空を飛ぶことへの憧れ”を具現化したようなオリジナリティの高いゲーム性にあったものと思う。走ったり跳ねたりといった従来型のアクションゲームとは異なり、立体的に表現された空間を舞うように飛び回ることができ、その特有な操作感覚にはそれまで感じたことのない爽快さを感じた。このゲームには「A-LIFE」と呼ばれる人工生命プログラムも組み込まれていて、ナイツの行動が夢の世界の住人「ナイトピアン」の生態系にも影響を及ぼすというシステムも画期的だった。

画像 1996年7月にセガサターン向けソフトとして発売された「NiGHTS(ナイツ) into dreams…」。アナログスティックを備えた「セガマルチコントローラー」の同梱版も用意され、これでプレイしたときの操作感覚が当時は新鮮だった
画像 現行ハードの画面と比べるとさすがに見劣りしてしまうが、当時のハードでこれほど立体的な空間表現ができたことには改めて感心させられる

 また、「ナイトメア」という文字通り悪夢の世界に引き込まれた少年と少女が、ナイツの力を借りながら勇気を取り戻していくというストーリーも良かった。特に、最終ステージで起こる“奇跡”には、言い尽くせないような感動を覚え、いまも忘れられないほど心に残っている。

 その年の冬には、セガサターンの販促の一環で「クリスマスナイツ」という非売品ディスクも制作されたが、既存ユーザーからの反響があまりに大きかったことから、急きょ、希望者全員に実費程度で頒布されることとなった。しかし、その後「ナイツ」の関連作品が作られることはなく、1作目の移植やリメイクでさえ一度も行われていない。「クリスマスナイツ」にしても、ゲーム本編は「ナイツ」の1ステージを収録しただけだったので(それ以外のおまけ要素は豊富だったが)、続編とは言い難い。多くのファンを獲得し、セールス面でも成功を収めながら、これほど長く続編やリメイク作品が制作されなかったのが不思議なくらいだ。

 そして今冬、ついに「ナイツ」は復活を遂げた。Wiiで発売された「ナイツ〜星降る夜の物語〜」は、セガサターン版「ナイツ」から実に11年ぶりとなるまさに待望の新作だ。

画像 長く切望していた「ナイツ」の新作が、11年もの歳月を経てWiiで登場。Wiiのハード特性をどのように活用しているのかにも注目したい作品だ
画像 壮麗なオーケストラサウンドのテーマ曲「NiGHTS:Journey of Dreams」に乗せて、ナイツが華麗に宙を舞うオープニング。前作ファンのひとりとしては、これを見ているだけで早くも涙腺がゆるむ……

幻想的な世界観はそのままに、ドラマ性を深めた新作

 今回のWii版「ナイツ」では、前作の世界観をほぼそのままの形で継承しつつ、全く新しいストーリーが展開されていく。「ナイツ」における夢の世界とは、人が寝ている間に意識だけが訪れる異次元、という設定。その中で、人は自身の意識を「イデア」と呼ばれる光に投影することで、楽園のような世界「ナイトピア」を作り上げているとされる。そこには、陽気であどけない生命体「ナイトピアン」も暮らしている。

 一方、悪夢の世界「ナイトメア」も存在し、その創造主である“ワイズマン”は、人々からイデアを奪うとともに、自らが生み出した魔物「ナイトメアン」を送り込んでナイトピアを消し去ろうともくろむ。

 似たような言葉が多くてややこしいが、ナイトピア側が善、ナイトメア側が悪と、構図は至って明快。ただ、実はナイツもワイズマンによって創り出されたナイトメアンの一人でありながら、自らの能力を駆使して人間やナイトピアンを手助けするというあたりにひねりがきいている。

 今作の主人公は、“ウィル”という少年と“ヘレン”という少女の2人。互いに面識はないが、2人ともある出来事がきっかけで悪夢にさいなまれ、そこでナイツと出会うことになる。少年と少女のそれぞれに異なるストーリーとステージが用意され、どちらからプレイを始めてもかまわないのは前作と同様だが、今回は主人公にまつわるストーリーがより具体的になった印象。特に、ウィルは父親と、ヘレンは母親との関係性が描かれており、家族愛や親子の絆が物語の軸になっていることが伺える。

画像画像 ウィルは、運動神経が抜群で、サッカーが得意な12歳の少年。しかし、いつもサッカーの練習相手をしてくれた大好きな父親が、突然の転勤でウィルの元から遠く離れてしまう。孤独感にさいなまれるウィルは、悪夢を見るようになるが……

画像画像 ヘレンは、バイオリンが好きな12歳の少女。バイオリンの親子発表会を間近に控えているが、思春期ゆえの反抗心からか、母親との練習にもいまひとつ身が入らない。複雑な思いを抱えるうち、ヘレンは悪夢へと引き込まれる

 また、今作ではステージの合間にイベントシーンがふんだんに盛り込まれていて、英語のボイスに日本語の字幕付きでキャラクターがよくしゃべることも特徴。ボイスが付いたことで、主要な登場人物たちのキャラクター像が明確になった半面、ナイツについてはこれまでのイメージと少しばかり違って見える。道化師かマジシャンをほうふつとさせる個性的なルックスは変わらないが、謎めいた雰囲気はやや影を潜めて、ソニックにも似た快活さが前面に出ている感じ。一方、ナイツの最大のライバルで前作にも登場した“リアラ”は、狡猾な性格がセリフや声による演技にも表れていて、ナイツとの違いが際立っている。

画像 今回の「ナイツ」は、イベントシーンが盛りだくさん。これは、ウィルが「夢の入口」で初めてナイツと出会う場面。ナイツのキャラクター設定に大きな変更はないが、声とセリフが付いて少しイメージが変わった?
画像 ナイツと似たような姿をしていながら、性格は正反対のリアラ。ワイズマンに絶対的な忠誠を誓うとともに、同等の能力を持つナイツにはライバル心を抱き、ナイトピアを救おうとするナイツたちをことごとく阻む
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news174.jpg 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  2. /nl/articles/2404/26/news154.jpg 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/12/news174.jpg 築年数不明の平屋にある、ボロボロ床板をはがしてみたら…… 発覚したヤバい事実に「ビックリ!」「大丈夫でしたか?」心配と驚きの声
  5. /nl/articles/2404/26/news022.jpg ママの足にくっつく生後7カ月の赤ちゃん、甘えてるのかと思いきや…… 計算された行動と「ちいこい後ろ姿がかわいすぎ」て目が離せない
  6. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  7. /nl/articles/2404/25/news069.jpg “作画軽減ガンダム”をガンプラで作成 → 使用パーツも最小限の再現ぶりに「完全に一致」「部品軽減ガンダム」
  8. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  9. /nl/articles/2404/18/news134.jpg 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  10. /nl/articles/2404/26/news024.jpg 0歳赤ちゃん「(ママ来たっ!)」→喜びが抑えきれなくて…… 尊すぎるダンスが300万再生「心が浄化されていく」「朝から癒やされました」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」