プレイするほどに勇気付けられ、心を打たれる――11年ぶりに「ナイツ」が復活:「ナイツ〜星降る夜の物語〜」レビュー(3/3 ページ)
4通りのプレイスタイルから自由に選べる
気になる操作方法については、Wiiリモコン単体での操作に加え、ヌンチャク、クラシックコントローラー、ゲームキューブ用コントローラーと、4種類のコントローラーに対応している。Wii向けソフトの中には、ゲーム内容との相性が良いとは思えないのにWiiリモコンでの操作を強要されるものもあったが、この「ナイツ」では4通りのプレイスタイルから自分が最も遊びやすいものを選べる。しかも、プレイ中でもコントローラーを切り替えることが可能。この配慮はなかなかうれしい。
4通りのプレイスタイルのうち、後者の3つは使用するコントローラーの形状が違うだけで、基本的な操作方法はほとんど同じと考えて良い。いずれもアナログスティックを倒せばナイツがその方向に進むので、あとはドリルダッシュなどに使用するボタンが違う程度だ。
最も変わっているのがWiiリモコン単体での操作で、この場合のみ画面上に「マインドサイト」というマークが表示される。この状態でAボタンを押し続けると、ナイツがその方向に飛ぶというしくみだ。初めてプレイする際のチュートリアルでも言われるが、Wiiリモコンによる操作感覚はかなりクセがあり、慣れないうちはナイツを思い通りに飛ばすこともままならない。しかし、これに慣れてくると、他のコントローラーとは違ったナイツとの一体感が得られ、新鮮な感覚でプレイできる。ただし、人間の状態では横向きに、ナイツと同化した後は縦向きに、とWiiリモコンを持ち替えなければならないのが少々面倒ではある。
4つの中で個人的に一番プレイしやすいと感じたのは、クラシックコントローラー。セガサターン版「ナイツ」をセガマルチコントローラーでよくプレイしていたこともあるが、クラシックコントローラーがそのときのプレイ感覚に最も近く、ナイツを操りやすかった。ヌンチャクは小回りが利きやすいものの、つい無意識にヌンチャクまで右に傾けてしまい(ナイツを右方向に飛ばす場面が多いため)、左手の手首が疲れてくる。ゲームキューブ用コントローラーも悪くないが、アナログスティックの頭がプラスチックのせいか親指が滑りやすいのが難点だ。
A-LIFEを応用した箱庭「マイドリーム」が楽しい
「ナイツ」を語る上で忘れてはならないのが「A-LIFE」。もちろん、今回のWii版にもA-LIFEが組み込まれており、あの愛嬌たっぷりのマスコット的キャラクター「ナイトピアン」たちも健在なのだが、A-LIFEの使われ方が前作とは大きく異なっている。
今回の「ナイツ」には「マイドリーム」という自分だけの箱庭が用意され、ここにナイトピアの各地からナイトピアンを連れてくることができるが、その方法というのが……、なんと「パラループでナイトピアンを吸い込む」というもの。これには心底驚いた。なぜなら、前作ではパラループにナイトピアンが巻き込まれると、悲鳴をあげながら消滅してしまうからだ。ナイトピアンに好かれたい一心で、「ナイトピアンの傍でパラループを作っちゃダメ!」と刷り込んできたわたしにとっては、あまりに衝撃的というか、違和感がありすぎて困惑しきりだった……。
要するに、ナイトピアンたちとの触れ合いの場を、ステージ上とは別に設けたわけだ。初めこそ戸惑ったが、実際にマイドリームへ足を運んでみると、時が過ぎるのを忘れるほどに楽しい……。ここでは、ナイトピアンが気ままに行動している様を間近で観察したり、抱きかかえたりすることができる。ブルーチップが彼らのエネルギー源になっているようで、投げつけてやるとたいそう喜ぶ。また、ミッションの取り組み方によってマイドリーム内の風景がどんどん変化していくほか、本体の時計と連動して服装が替わったり、お天気チャンネルとの連動でマイドリーム内の天気も変わるなど、さまざまな仕掛けがある。さらには、Wi-Fiコネクションを使って他のプレイヤーのマイドリームにも遊びに行くことができるなど、これひとつ取っても長く遊べそうな作りだ。
ラストはミュージカルを見た後のような感動に包まれる
Wii版の映像表現がセガサターン版よりもはるかに美しいのは当然として、スピード感がアップし、カメラワークもダイナミックになって、プレイ中の爽快さは一段と上がった印象だ。ただ、キャラクターの輪郭にジャギが目立つことや、一部のシーンで処理落ちが起こるのは残念。ゲーム内容も、ところどころに変更や改良を加えてあるが、中には蛇足かなと感じたものもある。
難易度については、ミッションによってややムラがあり、1回であっさりクリアできたものもあれば、何度もリトライしてやっとの思いでクリアしたものもあった。どちらかというと、ヘレン側のミッションに難しいものが多かったように思う。それでも、総合的に見れば難易度は低めで、理不尽さを感じさせるようなアンバランスさはない。
気になる部分はあるにせよ、「ナイツ」の根本的なおもしろさはWii版でも変わっていない。そして、前半のプレイで引っかかったことが些細に思えてしまうほど、最終ステージからラストにかけての展開は、もう“見事”としか言いようがない。それは、演出が優れていることもさることながら、音楽の効果が大きい。
「ナイツ」で印象に残っているのは、もちろんあの曲。前作のテーマソングでもあった「Dreams Dreams」だ。この楽曲は、数あるゲームのテーマソングの中でも傑出した存在と思ってきたが、このWii版「ナイツ」で改めてそう感じる。少し変な表現ではあるが、歌詞にもメロディにも“健全さ”が強く感じられて、聴きながら不思議と勇気付けられる。「Dreams Dreams」という曲がなければ「ナイツ」は成立しなかったろうし、逆に「ナイツ」というゲームがなければ「Dreams Dreams」も書かれなかっただろうと思えるほど、この曲は「ナイツ」の世界と見事にマッチしている。曲調はまるで違うが、例えばディズニーの「When You Wish Upon a Star(星に願いを)」のように、この先スタンダードナンバーとして歌い継がれてもおかしくない普遍性を持った楽曲だ。
わたしの場合は懐かしさも手伝ってのことと思うが、ゲーム中でこの曲が流れ出したとき、思いがけず涙がこぼれた。複数のボーカルが代わる代わるリードを取ったり、アドリブ風の節回しを入れながら盛り上げていくあたりは、ミュージカルのそれとよく似ていて、実に感動的だ。
このゲームを最後までプレイすると、きっと子供を持つ大人は我が子のことを、子供は自分の親のことを思うのではないか。その意味でWii向けに制作したのは正解だろうし、子供から大人まで幅広い年代に薦められる作品だ。先ほどミュージカルを引き合いに出したが、Wii版「ナイツ」は親子向けの良質なミュージカルを見た後のような心地よい感動をもたらしてくれる。
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