「日本はもうゲーム先進国ではない」――岡本吉起氏が語る“世界に通用するゲームプロデュース”CEDEC 2008特別インタビュー(3/3 ページ)

» 2008年09月08日 18時37分 公開
[池谷勇人,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

自分のゲームで、周りを幸せにしたい

―― 岡本さんが独立されてから、今年でちょうど丸5年になりますが、5年間を振り返ってみていかがですか?

岡本 今の社員数がだいたい300人くらいなんですが、本音で言えば、当初僕が考えていたビジョンよりも、規模としては少し小さい。でも想定内ですよ。当初5年目のMAXとしては、500人もあるし、逆に80人くらいというパターンもありえると思ってた。

―― 当時のインタビューなどで語っていた退社理由のひとつに“やりたいこととのズレ”というのがありましたが、具体的にやりたかったことというのは?

岡本 一言で言えば、新規のタイトルを立ち上げたかったんですよ。あの頃、僕が会社から期待されていたタイトルは続編だった。でも、ゲーム市場は新規タイトルがあって成長するものじゃないですか。そこに考え方のズレがあった。後は先ほどから言っているように、日本のタイトルが世界に通用しなくなっている時代だからこそ、世界中の人にもっと日本のゲームを楽しんでもらいたかった。

―― 5年前から、すでに日本が出遅れつつあるのを感じていたということですか。

岡本 あの頃はまだ、ニンテンドーDSもWiiも発売される前だったから、まさかここまで任天堂が成功するとは思わなかったんですよ。独立する時に僕がやりたかったことって、実は全部任天堂がやっちゃいました。今にして思うと、大それた夢を持っていましたね。あれは任天堂くらいの規模があって、初めてできることだった。

―― 最近のゲームリパブリックが関わったタイトルは何でしょう?

岡本 直近だと、ニンテンドーDSの「ドラゴンボールDS」が9月18日に発売されますね。少年時代の孫悟空を描いた、無印の「ドラゴンボール」としては久々のタイトルです。

―― ドラゴンボールDSは岡本さんのところで開発されていたんですね。

岡本 ほかの人が持っているコンテンツを、自分なりに料理したらどうなるか、っていうのも一度挑戦してみたいことのひとつだったんです。ドラゴンボールのゲーム化って言うと、今では「ドラゴンボールZ」が完全に主流なんですが、無印だって掘り起こせるんだということを示したかった。後は単に僕が好きなんですけど(笑)。

―― では、無印で行こうという提案は岡本さんのほうから?

岡本 そうそう。というか、悟空が動いて、ブルマがいて、如意棒で戦っているところまで作ってから持っていったので、「大体できてるじゃんか」と言われました。そういえば、カプコン時代にコラボレーションしたタイトルの中には、ほとんど完成してから持っていったものもありましたね。

photo

―― それは持ってこられた側も驚いたと思います。

岡本 あの時は「西からヤ○ザがやってきたぞ!」って笑われましたよ(笑)。

―― 今後の目標としては?

岡本 大きいところでは、自分たちのゲームを遊んだ皆さんが、何らかの影響を受けて、幸せな気持ちになってくれることですね。「ストリートファイターII」を作った時、僕はそれができたと思ってるんです。練習して練習して、最後に昇竜拳が決まって相手が吹っ飛んでいって、それでまた明日も頑張ろうと思った人や、将来クリエイターになろうと思った人、本当に格闘技をやろうと思った人がいただろうと。あれと同じようなことがもう一度できたらいいなと思いますね。バイオハザードの時は、怖かった怖かったばかり言われたんで、あんまり幸せにはできなかったと反省してるんですが(笑)。

―― 私もストリートファイターIIで幸せになったひとりです。

岡本 小さいところでは、まずは一緒に頑張ってくれてるゲームリパブリックの社員から幸せにしてあげたいですね。みんなが喜んでくれることが僕の幸せですから。

―― 自分の幸せより、まず周りを幸せにしたいと。

岡本 それが僕の一番の幸せなんです。その結果としてよいゲームが作られることにもなるし、ユーザーが喜んでくれることにもつながっていく。全部つながってるんですよ。マザーテレサの言葉で、「世界を平和にしたいなら、まず家族を幸せにしなさい」ってありますけど、その通りですね。

―― きれいにまとまったところで、CEDECの講演、楽しみにしています。

岡本 たぶんガッカリさせますよ(笑)。大勢の人の前で話すのって苦手なんです。少人数で、こうやって向かい合って話す分にはいいんですけどね。

―― いえ、きっと講演を聞いてゲームリパブリックに入ろうという若い人が……。

岡本 それだったらありがたいんですけどね。逆に講演を見て、がっかりして人が抜けてったりしてね。なんだよあのオヤジ、含んだ言い方してて結局アレかよみたいな(笑)。

―― オチもついたところで、本日はどうもありがとうございました。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/07/news109.jpg 「ロッチ」中岡、顔にたっぷり肉を蓄えた激変ショットに驚きの声 「これ…ヤバいって」「すごい変身っぷり」
  2. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  3. /nl/articles/2405/06/news040.jpg 「東京チカラめし」約2年ぶりに東京で“復活” まさかの出店場所に驚き「脳がフリーズしそうに」
  4. /nl/articles/2405/03/news025.jpg 「今までなんで使わなかったのか」 ワークマンの「アルミ帽子」が暑さ対策に最強だった 「めっちゃ涼しー」
  5. /nl/articles/1611/04/news117.jpg 「ヒルナンデス!」で道を教えてくれた男性が「丁(てい)字路」と発言 出演者が笑う一幕にネットで批判続出
  6. /nl/articles/2405/07/news114.jpg 大谷翔平がエスコート 真美子さん「ドジャース奥様会」に再び登場で頭ひとつ抜き出る
  7. /nl/articles/2405/08/news030.jpg 「新紙幣出てきたんだけど」 レジで“千円札”見た若者がポツリ→まさかの正体にショック広がる 「そうだよねえぇ」
  8. /nl/articles/2405/07/news043.jpg 16歳お姉ちゃんと0歳弟、赤ちゃんが泣くとすぐに抱っこして…… 愛をそそぐ姿に「愛しさ溢れてて号泣」「いいね1万回押したい」
  9. /nl/articles/2405/05/news018.jpg 地元民向け“バリカタ仕様”の袋麺だと思ったら……思わぬ落とし穴に「トラップ仕掛けられてる」「自分も引っかかった」
  10. /nl/articles/2405/06/news001.jpg 川をせき止めるほどのゴミ→ボランティアがを徹底的に掃除したら…… 見違える変化に驚き
先週の総合アクセスTOP10
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評