小浜良いとこ「アメリカ大統領選挙」ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(2/3 ページ)

» 2008年12月03日 00時00分 公開
[ゲイムマン,ITmedia]

ゲーム独自のルールに泣かされる

 選挙運動の途中、5万ドルの費用をかけて世論調査を行ない、各候補の支持率を調べることができる。

 ……ザクソン候補の支持率が0%だった。

 政策値を変えてみたり、演説会を増やしたりしてみたが、支持率は大して変わらない。3つの政策も選び直したいところだが、これはこの州の選挙が終わるまで変えられない。結局アイオワ州で惨敗し、続くニューハンプシャー州でも惨敗。

 このゲームでは、2州続けて獲得代議員数が15パーセントを割ると、強制的にゲームオーバーとなる。始めてから10分と経たないうちにゲームが終わってしまった。

 実際の大統領選でもそうだったように、このゲームでも州によって各候補の支持率が大きく異なる。ザクソン候補は白人からの支持も得ているとはいえ、やっぱり黒人の多い州のほうが有利だ。しかし、最初のアイオワ州は、黒人の人口が全体の1.4%。次のニューハンプシャー州に至っては0.4%しかない。

 この2州を過ぎれば、次のスーパーチューズデー(多数の州で同時に予備選が行なわれる日)からは巻き返せるはずで、事実、ジェシー・ジャクソン氏は、スーパーチューズデー以降に盛り返した。だがこのゲームでは、その前に選挙戦から撤退させられてしまうのだ。“No, We Can't.”

photo 政策値を決める際は、ゲージ上のロバ(共和党なら象)を左右に動かす。支持率を見ながら調整しよう
photo アイオワ州での選挙運動の中盤、各候補の支持率を調べてみた。ここから巻き返すのは難しい

 しかたがないので、アイオワ州とニューハンプシャー州でトップだった、スズキ候補を選んで再プレイしてみた。スズキ候補は架空の日系人だが、これら2州で強い有力候補ということを考えると、リチャード・ゲッパード氏のポジションを受け継いだものと考えられる。対日強硬派で知られたゲッパード氏の代わりに日系人を据えたのは、一種の皮肉かもしれない。

photo スズキ候補は保守派で農業保護を重視。さすがに日本に対してはあまり厳しくない

 スズキ候補はやはり強く、アイオワ州とニューハンプシャー州で連勝。でも、ゲッパード氏の代わりということは、現実の1988年大統領選に照らし合わせてみると……案の定、スーパーチューズデーで敗れてゲームオーバー。

 といっても、その時点でまだ獲得代議員数トップだったのだ。常識的に考えて、撤退するなんてあり得ない状況だが、スーパーチューズデーの東部3州と西部5州で敗れたために、このゲーム独自のルールのせいでゲームオーバーになってしまった。納得いかない。


女性候補の激しい予備選

 この後、デュカキス氏をモデルにしたデカキス候補でプレイするが、やっぱり勝ち進めず。

 共和党の候補に乗り換えることにしたが、当時のブッシュ副大統領をモデルにしたプッシュ候補でもうまくいかない。実際の選挙では勝って大統領になった人なのに。

 実際の共和党予備選では、ドール氏、ロバートソン氏といった対抗馬こそいたものの、結果はブッシュ副大統領の圧勝だった。しかし、このゲームにおいては強力な候補がもうひとりいる。

photo サッシャー候補は“鉄の女”とよばれるだけあって、極めて保守的で軍拡に積極的。また、財政改革を進めようとしている

 サッシャーという名前の女性候補である。そう、モデルは明らかに、当時のイギリス首相であるマーガレット・サッチャー氏。なぜ、アメリカ大統領選挙に?

 あくまでサッシャーなる別の人物ということにしておこう。このサッシャー候補を選んでプレイしてみたら、これがまあ強い強い。プッシュ候補と1対1の選挙戦を繰り広げて、残り4州までもつれ込んだ。アメリカで初めての、党選出の女性大統領候補誕生なるか?

 だが、ここに落とし穴が潜んでいた。共和党のラスト4州の予備選は、勝った候補がその州の代議員を総取りできる勝者独占方式。獲得した票がプッシュ候補より1票でも少ないと、その州で得られる代議員は0になってしまうのだ。

 私はニューヨーク、ペンシルバニアと連敗。僅差の負けなのに“2州続けて獲得代議員数15%未満”という条件に引っかかってしまって、強制的にゲームオーバー。結局、本選挙はおろか、党の全国大会に進むことすらできなかった。


今とはかなり異なる政策と争点

 このゲームが発売された1988年は、政治の状況や選挙の争点が、今とはかなり異なっていた。48の政策項目を見てみれば一目瞭然(りょうぜん)だ。

 まず、当時はまだソビエト連邦(ソ連)があった。ゴルバチョフ書記長によるペレストロイカが進んでいたとはいえ、防衛・外交問題はソ連と共産圏に絡むものが多い。宇宙からレーザーを撃って、敵の大陸間弾道ミサイルを破壊するという、スターウォーズ計画(戦略防衛構想、SDI)なんてものもあった。

 このほか、南アフリカのアパルトヘイトへの制裁(アパルトヘイトがデクラーク大統領によって撤廃されたのは1991年)、パナマ運河返還(アメリカが管理権を持っていたが、1999年パナマへ返還される)、ニカラグア反政府組織への支援(当時アメリカは、サンディニスタ革命政権と対立するコントラを支援していた)なども、今とは状況が違う。

 それから、当時はまさにジャパンバッシングの真っ只中だったので、ゲームにもそれが反映されている。政策項目には「対日本問題」というジャンルがあって、その中にある項目は、日本車の輸入規制に、日本製品のダンピング制裁(半導体)、農産物輸入自由化要求(牛肉とオレンジ)、新包括貿易法案(スーパー301条)、関税の引き上げと輸入課徴金、商業捕鯨の禁止、日本資本の(アメリカへの)進出、日本の防衛力強化。

 日本資本の進出以外は、いわゆる日本叩きというか、日本に何か注文をつけるものばかり。これらを実行すると支持率が上がる上がる。親日家のスズキ候補と、自由な貿易を是とするプッシュ候補は別として、ほかの候補でプレイするなら、かなり有効な攻略法になってしまうのだ。

photo 政策項目は、この6分野に各8項目、合計48もある
photo アメリカ国内での利害対立が少ないので、ジャパンバッシングは人気取りに有効な主張なのだ。残念ながら

 それと、今では考えられない項目が「エイズ患者の隔離」。現在では、エイズが血液感染と母子感染と性交以外では感染しないことがかなり知られるようになったが、当時は原因不明の病と思われていたため偏見が強く、保守派の人々を中心に、このような政策を望む声があったらしい。

 アメリカ大統領選挙というゲームで残念だったのは、48もある政策項目の中から、わずか3つしか選べなかったこと。どの項目を選んで、政策値をゲージのどこに設定すれば、支持率がプラスになるのか? 何度もプレイして確かめないと分からない。しらみつぶしに、支持率の上がりそうな政策をただ探すだけの展開が繰り返される。

 さらに、9800円という価格や、当時まだ少なかった大人のファミコンユーザー向けの内容、日本人になじみのないアメリカ大統領選挙がテーマという条件が重なり、かなりマイナーなゲームとなってしまった。しかも前述の通り、発売日がスーパーマリオブラザーズ3のわずか5日後だし。

 それにしても、党大会にも本選挙にも進めなかったので、今年テレビでよく見たような、派手で大規模な選挙戦を体験できなかった。なんか締まらない記事になってしまいそうだ。どうしよう?

 ……せっかく小浜まで行ったんだから、最後に小浜の観光名所を紹介して締めよう。

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