「God of War III」はいかに作られたのか――キーマンたちへのインタビューSCE America Santa Monica Studioリポート(4/4 ページ)

» 2010年04月07日 02時38分 公開
[戸村賢一,ITmedia]
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God of War3開発の総責任者であるSinior ProducerのSteve Caterson氏

 さて、6人のキーマンに詳細な話を聞いたあと、ツアーの最後として「God of War」シリーズの総責任者ともいえるシニアプロデューサーのSteve Caterson氏に20分ほどのインタビューをすることができた。皆さんご存じの通り、「God of War 3」はシリーズ3部作を締めくくる最終作とアナウンスされており、果たして今後はどうするのかなど、気になるところは数多い。なお、インタビューはツアー参加メディア共同で行なわれたのだが、どのライターが質問したかは区別せず、日本側からの質問はすべてQ.、Caterson氏の回答はA.としている。

Q God of War 3の開発は3年間に渡る長いものでしたが、プロジェクトを終えての感想は?

A 今はとてもほっとしています。私の場合、God of Warシリーズには7年間も関わってきましたので。1でスタートし、2からはプロデューサーとなったのですが、その間は長い手探りの旅が続いてきましたので。(実際の旅に例えるなら)ケニアを数回横断する感じでしょうか(笑)

Q God of War 3でのあなたの役割とはどのようなものだったのでしょうか?

A プロデューサーは作品にかかわるすべてのマネジメントに責任があります。さまざまな決断やスケジュール管理、人員管理、予算の管理……そして各チームやメンバー個人がゲームをよりよいものに作り上げる環境を整えること、それが私の仕事です。

Q ゲームデータが35GBということでPS3では初の2層ディスクでの発売となり、コストが高くなったと思うのですが、その決断はいつ頃行ったのでしょうか?

A (2層ディスクを)選んだということではなく、起こるべくして起きたということです。最終的な容量がどれぐらいになるかは分からなかったのですが、プロジェクトの最初から1層では無理なことがわかっていたので、2層を前提にプロジェクトを進めました。

Q God of Warシリーズの制作に関わっている人は全部で何人ぐらいですか?

A God of War 1では全部で50〜60でした。2で人数が増えて約80人。3でさらに増えて約120人になりました。シリーズのなかでも人の出入りはありましたし、シリーズ全作に関わっている人もその役割は変わっています。一番いい例がディレクターのStigで、彼は1ではエンバイロンメントアーティストで、2ではアートディレクター、そして3ではディレクターとなりました。彼個人もそうですが、プロジェクト自体もシリーズを重ねるたびに大きくなり予算も増え、その分だけディレクターの役割や責任も重くなっています。

Q ディレクターにStig(Stig Asmussen)さん起用したのはどのような理由からでしょうか?

A それは難しい質問ですね。Stigをディレクターに起用した理由は一つでは語れないので。まず、彼はGod of Warシリーズに1作目から関わり、シリーズのことをよく理解しています。そして、プログラミングに関すること、アートに関すること、(プロジェクトを進めるための)決断力に関するもの……そうしたゲームを創作するために必要なさまざまな要素を持っています。彼はゲームを愛していることはもちろん、マルチメディアコンテンツや映画や、ポップカルチャーなど、さまざまなものが大好きで豊富な知識を持っています。また、過去には20人以上のプロジェクトの管理も任されていますし、コミュニケーション能力も高い。そうした知識や経験が彼を素晴らしいディレクターにしていると思います。

Q God of Warシリーズを続けて見ると1〜3までストーリーがつながっているのですが、全部のストーリーを最初から考えていたのでしょうか?

A God of WarはDavid Jaffe氏(注)のアイデアで作られたもので、1作で完結するものでした。1作目が成功を納めたことで「シリーズ化しないか」という話があり、2作目の制作を検討しているなかで「さらにもう一本作ってシリーズ完結にしよう」というアイデアが出て、結果として3作目まで作ることに決めました。

Q シリーズ全体としてストーリーはギリシャ神話を敷衍していたものになっていますが、そうしたモチーフを使いどういったものを表現したかったのでしょうか?

A God of Warシリーズがギリシャ神話を舞台にしたのは第1作目がそうだったからです。Davidが第1作目をディレクターしたときには、(彼は)クレイトスがギリシャ神話を潰していくのを見せようとしたのですが、私にはなぜそうしたかったのかはわかりません。2作目、3作目については、スタジオの多くの人たちがより面白いものを作ろう、よりすばらしいものを作ろうということでひとひとつステップを積み重ねていった結果、このように素晴らしいものができたということです。

Q God of Warシリーズはいまやアメリカにおいてソニーの中心的な作品となっていますが、そのことについてどう思いますか?

A 大変光栄なことです。ですが、私の性格もあるのでしょうが、あまりそのことを深く考えないようにしています。考えすぎるとナーバスになってしまいますから。開発に関わる長いレースのなかでよい仕事をするためには、自分のペースを守りつつ自分に挑戦しつづけ、自分ができるベストを尽くすことです。外部からの刺激は必要ですが、あまり影響されすぎることはよくないことで、外からの目を意識せずに自らの手を動かし続けること、それがより質の高いゲームをユーザーの方に送り届けることにつながると考えています。

Q God of War 3はどのようなゲームとして評価されたいですか?

A 多くの賞賛を受けて、多くの賞をもらい授賞式にたくさん参加して……というのは冗談で、本当に望んでいるのは多くの人に楽しんでもらうことです。もし、多くの人が楽しんでくれたら、私たちの仕事は大成功です。個人的には、私もStigもこの3年間はずっとGod of Warの仕事をし続けていて、人生を賭けてきました。友達や家族からは何度も「仕事を止めてゲームの以外のこともやったら」といわれても仕事に没頭してきました。なぜなら、ゲームを作ることが私にとってとても価値があることだからです。

Q これが終わったらどうしますか。God of War 4を作りますか?

A 次の仕事の予定はありません。ただ、いろいろ違うことがやりたいですね。私はアートがバックグラウンドにありますので、自分のアートをよりよくするには、いろいろなものからの影響を受けなければなりません。音楽、エンターテインメント、建築……スキューバーダイビングもそうですが、そうした経験はすべてアートに跳ね返ってきますので。もし将来、幸運にもGod of Warシリーズに戻ってくることができたときには、そうした経験を持ち込むことができますし、きっとシリーズをよいものにできるでしょう。

Q ファンの方は、あなたがそうしている間にももっと(God of Warシリーズで)遊びたいのと思うのですが、追加コンテンツの予定はないのでしょうか。

A それはまさに今検討しているところなので、スタジオの方に後ほど確認してもらえればと思います。

Q 最後に、日本の読者やゲーマーザーに対して伝えたいことを一言お願いします。

A God of War 3では、私たちはPS3の物理的なパワーをできる限り引き出すように努力をしました。プレイされるゲーマーの皆さんには、そのインパクトをぜひ体験してほしいです。そしてGod of War 3がPS3におけるベンチマークとなってくれることを希望しています。先日、God of Warと2がCollectionとして発売されましたが、今God of War 1を振り返ると、当時は「おおっ」と思ったものも今では全然いいものには思えません。同じPS2版である1と2を比較しても、2は相当進化しています。はたして、将来PS3版で出たGod of War 3を振り返って見たときどう感じるか。相当いいと感じるか、それともそうでないか、今から楽しみです。

※(注)David Jaffe氏は、God of Warシリーズ生みの親ともいえるゲームデザイナーで、シリーズ1ではディレクターを務めている。現在はSCEAを離れているが、SCEA時代にはPS1〜PS2時代の大ヒット作「Twisted Metals」シリーズのディレクターも務めている。
スタジオ内には卓球場やカフェもある。ちなみに、カフェでは飲み放題・食べ放題だとか

「ぽっちゃりプリンセス」の日本向けローカライズを担当する、Matt Morton氏(左)とDeborah Mars氏(右)
日本ゲームをアメリカ向けにローカライズするセクションには、このようなブースも。提灯やメニューは本場・大阪で直々に手に入れたものだそう

「GOD OF WAR III」
対応機種プレイステーション 3
ジャンルアクションアドベンチャー
発売日2010年3月25日
価格5980円(ゴッド・オブ・ウォー トリロジー:9800円)
プレイ人数1人
CEROZ(18歳以上のみ対象)
(C)Sony Computer Entertainment America Inc.
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